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『フランスの港町、ル・アーヴルで現代アート散歩』ヨーロッパ写真日和VOL.228

こんにちは、吉田タイスケです。今回はマルセイユに次いでフランス第二の港湾都市であり、第二次世界大戦後に再建された街並みが世界遺産に登録されているル・アーヴルから。写真はブラジル人の世界的建築家、オスカー・ニーマイヤーが手がけた文化センター「ル・ヴォルカン(火山)」。青空に白が映えます。

1982年に完成。自然の造形を感じさせながら、宇宙船や秘密基地(←は?)っぽくもあり、どこを切り取っても絵になります。

しかも上空から眺めると、建築全体は鳩の形になっているそうです。白い火山二つが羽にあたる部分になりますが、地上からは想像できません。

さて、今回は街歩きで出会える、いくつかの現代アートをご紹介。2017年の開港500周年をきっかけに市内にモニュメントが配置され、それ以来毎年「ル・アーヴルの夏」と題したアート・フェアが市内で催されています。2020年は17作品中6作品が新作。今地図を見ながら探しているのは、水面に浮かぶ文字です。この橋を渡ると見えるはずですが、、。

UN ETE LE HAVRE
https://uneteauhavre.fr/fr

見えてきました。文字は鏡で作られていて、天候や光で色も変わって見えます。

「H20=$(2020)」 ALICE BAUDE
直訳すると「唯一の現実のためのLIQUIDE」。LIQUIDEには「水・液体」という意味と、「現金」という両方の意味があります。水の揺らぎを通して文字を見ていると、その意味までが曖昧になっていくようです。

橋から見た「ル・ヴォルカン」も、未来感があって良いです。背景の街並みは一時、無味乾燥というイメージを与えていましたが、2005年に世界遺産に登録されてからというもの、コンクリートにもちゃんと存在する表情がポジティブに評価されるようになりました。写真の奥に写っているのは、コンクリートで建てられたサン・ジョセフ教会。外からは全くわからないんですが、内部には色と光が満ちています。

「JARDINS FANTOMES (2017)」 BAPTISTE DEBOMBOURG
元々は港だった場所に、ブロワ城にあるフランソワ一世の居室をモチーフにした椅子が置かれています。500年ほど昔、ル・アーヴルに港を作るように命じたのが当時のフランス王、フランソワ一世だったので、それにちなんだ作品だと。ブロワ城に行かないとモチーフがわかりませんが、この居心地の良い場所に座って新聞を広げれば、きっと気分はもう王宮のはず←強引。

周りに植えられたアザミボールも、なんだか作品に見えてきました。

港に向かってパリ通りを歩いていると、遠くにル・アーヴルのパブリック・アートを代表する作品が見えてきます。カラフルなコンテナを組み合わせたアーチ。その巨大さが伝わるでしょうか。

「MONSIEUR GOELAND(2020)」 STEPHAN BALKENHOL
途中の広場では、「ムッシュー・カモメ」が止まり木にすっくと立っています。港町といえば空を舞う鳥。このカモメがなかなかのイケメン&海の男なんです。

「お嬢さん、オレに惚れると火傷するかもめ、、」
作品解説には「海を探しているかのよう」と書かれていましたが、こうして見ると、ムッシューが見つめているのは「未来」だと思えます。キリッと行きましょう。

「踊る椅子」とでも名付けたくなる、広場の一角。

「APPARITIONS(2019)」 STEPHAN BALKENHOL
こちらは「出現」と名付けられた作品。港沿いの広場周りにあるアパートの壁に、何人かの人物が「出現」しています。上が作品なんですが、それに呼応するかのように下の窓辺に人が、、。等身大感が、作品の不思議さを引き立てていますね

「CATENE DE CONTAINERS(2017)」 VINCENT GANIVET
コンテナ作品に到着しました。ル・アーヴルは港湾都市ですから、それを象徴するコンテナがモチーフになっているんですが、色、形、高さ(28m!)といい、まるでレゴのようです。

別角度から。プラスチックでできているかのようですが、しっかりコンテナです。

コンテナがおもちゃのように積まれていたっていい。現代アートと一口に言っても千差万別ですが、固定観念を鮮やかに裏切ってくれるような作品が個人的に大好きです。「こうでなければならない」という枠を軽々超えていく作品が目の前にあると、自分もいろいろな鎖から自由になれる気がします。今ならきっと空も飛べる!←いや、飛べないから。

次は先ほど背景に映り込んでいた、教会を目指します。

「LA TENDRESSE DES LOUPS(2020)」 CLAUDE LEVEQUE
教会内部に到着。中央に設置された花のカーテンが作品です。タイトルは直訳すると「オオカミ(性悪な奴等)の優しさ」となるんですが、、ちょっと意味が不明です。外からは全く見えませんが、ステンドグラスを通してコンクリートの柱に映る光が幻想的な空間。装飾がほぼないので、それが逆に内部に入った人間の視線を中央の吹き抜けに導きます。

その中央が示すのは、もちろん天の国へ通じる光。

その道に照らされる作品が、聖母を象徴する百合の花。聖霊に連れられたマリアが天に昇るイメージでしょうか。

通常ステンドグラスには聖書の場面が描かれたものが多いですが、この教会では光の色そのものに意味が与えられています。例えば、西から差す光は慈善を象徴するピンクとオレンジなど。

人があまりいない平日に時間をとって、光が移り変わるのを眺めていたい教会です。

こちらは渋い外観。

さて、最後に中心部から少しだけ離れた海岸沿いに設置された彫刻を見にきました。

ビーチ近くの渋滞を避け、少し高台に駐車したのですが、おかげで見晴らしも良く。

宙に浮かぶかのような象が、お目当ての作品です。

A L’ORIGINE(2020) FABIEN MERELLE
「起源」と題されたこちらの作品、解説には「自分自身との戦いに囚われた男を、その肩に象をのせている姿で象徴している」とありますが、これはどう見てもサーカスです←いや、解説読んで。「はっ!」とか「よっ!」というかけ声が今にも聞こえてきそう。持ち上げられない象を持ち上げる姿に、やはり自由を感じて楽しくなります。以上ダイジェストですが、ル・アーヴルからアート散歩をお届けしました。次回もどうぞお楽しみに。

『フランスの港町、ル・アーヴルで現代アート散歩』ヨーロッパ写真日和VOL.228staff

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