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『まるで森に浮かぶ船、ルイ・ヴィトン財団の美術館へ』ヨーロッパ写真日和VOL.284

こんにちは、吉田タイスケです。今回は美術館巡り。ルイ・ヴィトン財団がメセナ活動の一環として2014年にオープンしたフォンダシオン・ルイ・ヴィトンを訪ねます。写真は美術館内にある屋上テラスです。

Fondation Louis Vuitton
https://www.fondationlouisvuitton.fr/fr

さて美術館ですが、まずは立地が良いんです。パリに隣接したブローニュの森の一部にあり、周りは緑に囲まれています。パリにある美術館(ここは隣接した隣町ですが)でここまで自然に囲まれている場所は、他にはありません。散歩がてらに立ち寄るのには理想的な場所。近くに車を止めて美術館へ向かう途中、騎馬警官に遭遇しました。パトロールなんですが、どこかに優雅さを感じるのがおフランス。

湖沿いの芝生でくつろぐ人たち。

その向こうに美術館の屋根が見えてきます。

ガラスをメインとして、船をモチーフにデザインされた建築はフランク・ゲーリー作。

近くまで来ると、その異様さというかインパクトがすごいんです。金属とガラスとは思えない軽さがあります。

見上げれば、ヨットの帆が風になびいて膨らんでいるかのよう。

まさに森に浮かぶ船という建築ですが、その美術館で今開催されているのが、フランスの現代美術家シモン・アンタイの展覧会(8月29日まで)。今やどこの美術館も事前予約必須なので、入館時間の予約はお忘れなく。

では、早速ギャラリーへ。

今年で生誕100周年のシモン・アンタイ(1922-2008)。実は自分はこの展覧会を観るまで知らなかったんですが(すいません)、フランス現代美術界を代表する作家の一人であり、一度見たら忘れられない作品ばかりです。

『物事が始まるのは「何もないところ」だ. . . 東洋でもどこでもキリスト教でも他の国でも、反抗でも無神論でも、どこの国でも、それはいつも同じ空虚化、剥奪である。
常に同じように空っぽにし、剥ぎ取ることが必要なことなのです。少なくとも、私たちはそうする必要があるのです』

こちらは金屏風の一部にも見えますが(←オイ)、神の存在と不在を同時に示していると解説にはありました。どの作品も一見して意味がわかりにくい抽象画ですが、塗っただけ描いただけなどというものではなく(当たり前)、その絵の前に立てば圧倒されるディティールから、「そこに何かある」と感じられます。

1960年代からアンタイはキャンバスを折り畳んで、そのシワの偶然性を利用した作品の制作を始めます。人為を離れた模様には不思議なリズムがあり、画面の力強さに引き込まれます。写真は聖母マリアへのオマージュとして描かれた「MARIANS」シリーズ。

微妙な青のグラデーションは、水面やガラスにも見えてきます。

マティスの切り絵を思わせる「STUDIES」シリーズ。

ポスターでこの絵を見た時は鳥のシルエットに思えたんですが、実際に絵を前にすると植物の葉のようでもあり、近づくと青の立体感もあり、次元の違う世界に迷い込みそうです。この迫力は写真では伝えきれないと思うので、日本で展覧会がある際は、ぜひ足を運んで実物をご覧になってください。

約130点が展示されている、アンタイワールド。

作品写真が続きますが、1972-1982年にかけて製作された、この「TABULAS」シリーズも個人的にとても好きな作品でした。同じように見える四角ですが、折りジワや筆のタッチの差異でひとつとして同じものはありません。

貴石が並んでいるようにも見えます。

大小11ある展示室の中、アンタイともうひとつの展示は「色のフーガ」と題し、5人の作家にそれぞれ空間全てを使って、キャンバスにとどまらない作品の製作を依頼したものでした。写真はKhatarina Grosseというドイツのアーティストの作品。インスタ映えな空間になっています。

二つの展示を見終わる頃には、目に映るものが全てアートに見えているはず(?)。

建築が窓から写す、光と影の模様さえも。

さて、展示を見終えたら階上のテラスへ行きましょう。この美術館に来たら外せない場所です。

隣接した公園を一望できます。

デッキから眺める、緑豊かな大海原。

遠くにはエッフェル塔も。

このテラスは建築の美しさと、緑の海を航行する船の開放感を味わえる特別な場所です。

この場所をパリに含めて良いなら、パリで一番好きなテラスです。小さなスタンドが出ているので、コーヒーも飲めます。

アート巡りはテラスで一息ついても、まだ終わりません。地上階の外廊下にはオレンジ色の照明と鏡を組み合わせた、オラファー・エリアソンの作品「インサイド・ホライズン」が常設されています。

ガラスのモザイク側。ここを歩いているといつの間にか柱は回転し、照明と鏡が入れ替わります。

解説にもあるように、さながら巨大な万華鏡のようです。

水面と光、色、鏡、自分自身が混ざり合い、反射し合う空間。

現実と別な空間を、行ったり来たりできる装置になっています。

森に浮かぶ船の中で、不思議な知覚、感覚を体験できるアートなテーマパーク。もうルイ・ヴィトン財団にお礼が言いたいくらいです(←意味不明)。以上、パリに来たら必ず立ち寄ってほしい現代美術館をご紹介しました。次回はパリのファッション・スナップをお届けする予定です。どうぞお楽しみに。

『まるで森に浮かぶ船、ルイ・ヴィトン財団の美術館へ』ヨーロッパ写真日和VOL.284Takashi -タカシ-

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