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『アスリート御用達ランニングシューズ、オンが世界フラグをノーホーに』ニューヨーク・ニューヨークVOL.105

今日は、マディソンです。朝晩は冷えますが、日中の温度が上がってきて、少しずつ春らしくなってきていますね。

今日はノーホーに来ています。おしゃれなショップが立ち並ぶソーホーは皆さんご存知だと思いますが、ノーホーは外からマンハッタンを訪れる人にはあんまり知られていないかもしれません。実はソーホーというのはサウス・オヴ・ハウストン、つまりハウストン通りの南の地区という意味で、ですからノーホーはハウストン通りの北の地区ということになります。

これまでノーホーというと、広々としたロフト・アパートメントが立ち並ぶ高級住宅地といった趣だったんですが、近年ソーホーが世界中から集まるブランドショップで一杯になってきているため、少しずつこの辺りにもショップが侵食してきているようですね。

オンは、マラソンなどの競技に参加する世界中のランナーたちに知られているブランドです。そのオンが、昨年12月にマンハッタンのノーホーに世界フラグシップ店をオープンしました。2010年にスイスのチューリッヒでスタートしたオンが世界に発表したミッション、それは“ランニングの世界を変革する”だったそうです。今では世界50ヶ国のランナーたちが愛用するブランドとなりました。

ランナーたち同様、タクシーも走っているようです。



フラグシップ店のアクセントになっているのが、3Dプリンターで作られた赤い岩。オンのロゴが入っていて、通りのかなり遠くからでも目印になります。

ランナーの為にオンがフォーカスしているのはもちろんスニーカーですが、他のアパレルも揃えていて試着できます。この試着室は、スイス・アルプスの香りに満ちていて、すがすがしい気分になれるんですよ。

元プロのアスリートであるオリビエ・ベルンハンドは、3度世界的な長距離走でチャンピオン獲得後に、現役を引退しました。引退後も、最高の走りをするための魔法の靴を探していた彼は、素晴らしいアイデアでスニーカーを変革できるのではないかと話すスイス人エンジニアに出会います。足が地に着くときには柔らかくクッションのように包んでくれて、とはいえ地面を蹴るときにはしっかりと硬くけり出せる、魔法のスニーカー。エンジニアとの試行錯誤の末にようやくそんなスニーカーにたどり着いた彼は、親しい友人のキャスパー・コベッティとデービッド・アレマンをさそって、2010年1月にオンを立ち上げました。



こちらが、オンNYCフラグ一番の呼び物、魔法の壁です。

ショップを訪れた人は、この写真のようにまずこの壁の前で軽く走ってみます。62ⅹ9x3フイート(19mx2.7mx91㎝)ものこの壁全体がスキャナーになっていて、ランナーの2~3ストロークさえ確認できれば、この壁がランナーの走りを計測したうえで細かく分析して、最も適したタイプのスニーカーを選んでくれるという仕組みになっているんです。

床に埋められた別のスキャナーでは、足のサイズをプラスマイナス1.25ミリの誤差内で、計測してくれるそうです。これまでスニーカーを選びに行く場合、マニュアルなサイズ計測器を置いているショップは多々ありましたが、ここまで科学的に、本人の走るスタイルからスニーカーを選び出してくれるシステムは世界初ではないでしょうか。



ピッタリなスニーカーのタイプがわかったら、今度は魔法の壁の反対側にまわって、色やデザインを好みに合わせて試します。

さすが、時計や万年筆など優れた精密機械で信用のあるスイス人によるエンジニアリングだと感心しますね。実は私、20代の頃チューリッヒに1年間滞在したことがあるんですが、街も空気も本当にきれいだったことを鮮明に覚えています。アルトシュタットと呼ばれる旧市街に住んでいたんですが、早朝6時前後から、街中を清掃車が動いてきれいにしていました。ゴォーッというその音で毎朝目を覚ましたものです。職場で良く感じたのが、スイス人とドイツ人は引継ぎも、あまり詳しく説明なく、あうんの呼吸でお互いカバーできるという信頼感でした。細部にこだわるところや責任感など、私たち日本人と似ている感じがしました。

起業から3年後の2013年には既に、陸上競技アスリートに転向したオリンピックチャンピオンの二コラ・スピリグが、オンのスニーカーで素晴らしい走りを見せたことがメディアの注目を浴びました。また同年にはベルギー出身のアスリート、フレデリック・ヴァン・リエルドが、ハワイのコナでのアイアンマン世界選手権で、オンのスニーカーを着用、見事世界一に輝きました。

オンのスニーカーで数々の賞に輝いたアスリートはその後もたくさん輩出されていますが、2018年オンは初めてドキュメンタリー映画を製作します。“栄光の冠をかぶった男”というこの映画は、アイアンマン世界選手権前日に事故にあい、首の骨を骨折し重傷を負った世界最速のアイアンマンであるティム・ドンの復活までの道のりを追った映画で、世界中で絶賛されました。

オンのサイトによれば、世界中でプロ・アマ両方のアスリートたちが、オンのスニーカーで競いあい、ベスト・タイムをあげている様子が分かります。

» www.on-running.com

アメリカでは、このご時世で、映画や劇場、レストラン、コンサートにアミューズメント・パークといった娯楽が大幅に制限される中、エクササイズやランニング、バイク人口は逆に大幅に増えました。今やスポーツブランドの勢いはすさまじく、ミッドタウンの5番街にも、ヨガウェアのルルレモン、ナイキ、アディダス、パンサーらのフラグシップが立ち並んでいます。

そんな中、オンはミッドタウンではなく、あえて粋なショップの立ち並ぶソーホーお隣のノーホーを拠点に、マンハッタンのランナーに着々とファンを広げて行っているようです。今年に入って行われたインドアグランプリ2021で、オン・アスレチッククラブ所属のオリヴァー・ホーア選手とジョー・クレッカー選手が見事新記録を樹立しました。

如何でしたか。 

アメリカの職業ネットワーク・サイトのリンクトインで、このご時世で大切な2つの職能について発表されていましたが、それは一つ目がITが自在に操れること、2つ目が転んでも立ち直る力、だそうです。ITになじんでいるというのはマイクロソフト・オフィスなど特定のソフトが操れることではなく、新しいソフトでも何となくこなせていく力で、というのもソフトウェアもアプリも毎日のように新しいものが世に出てきていますから。

2つ目の転んでも立ち上がる力、回復力はこのご時世で本当に大切だと実感しました。世界中が躓く状況はまれですが、それぞれの人生におきかえても、転ばない人生なんてまずないですからね。国によってまだばらつきはありますが、ワクチン接種が浸透してきて、いよいよ収束が現実味を帯びてきました。エクササイズをしたり、走ったり、身体を少し動かして、回復にそなえませんか。

ではまた、ニューヨークでお会いしましょうね。

『アスリート御用達ランニングシューズ、オンが世界フラグをノーホーに』ニューヨーク・ニューヨークVOL.105Takashi -タカシ-

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