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『ソーホー散策』ニューヨーク・ニューヨークVOL.130

マディソンです。

ミーティング終わりでソーホーをぶらぶら歩いています。この辺りは石畳なので、車が運転しにくい分だけ交通量が少なく、ゆったり歩けるところが良いですね。ファッション・ウィークの頃には頻繁に来る街角です。

いつもは急ぎなので通り過ぎるだけでしたが、実は少し前から気になっているショップがありました。それがこのギャニィ。今日は次のアポまで少し時間に余裕があるので、実際に入ってみようと思っています。

バッグの持ち手がユニークで人目を惹きますね。全体的にデザインもかなり斬新です。

ギャニィは2000年に、コペンハーゲンで画廊経営をしていたフランス・トゥルールセンが立ち上げたブランドだと聞いています。どおりで、美的センスが他のインディーブランドよりずっと洗練されている気がしていました。2009年からはニコライとディッテのレフストレップ夫妻が運営していてヨーロッパには27店舗あるそうです。日本に進出してきているかどうかはわかりませんが、欧米では最近認知度を上げてきているブランドだと言えますね。

いわゆるラグジュアリーブランドですが、位置づけとしてはディオールやルイヴィトンのようなハイブランドではなく、とはいえザラやH&Mよりはラグジュアリーという趣でしょうか。

ニューヨークでも、まだまだ“みんなが身に着けています!”というほど人気というわけではありませんが、ビヨンセやリアナらファッショニスタがインスタに上げ始めているようです。



今年の冬流行のパフィ―なジャケットも、ギャニィにかかると色も柄も斬新で、ぐっと美的センスが上がります。大ぶりなバッグも、クロスボディだと今風ですし、ブルーとはいえパープルがかっていて、一味違いますね。何より見ているだけでも楽しいアイテムばかりです。

2019年頃からでしょうか、ニューヨークでも北欧ブランドは人気急上昇してきているように感じます。考えてみればH&Mはスウェーデンですし、マリメッコはフィンランドでした。北欧ブランドの特徴としては機能性やデザイン性の高さが上げられますが、そういえば家具のイケアもスウェーデンからでしたね。北欧ブランドはその上、ただ今世界中のブランドがミッションに盛り込んでいる、サスティナビリティや倫理性をうたったパイオニアでもあるそうなんですよ。

可愛いショップがありました。ストーニークローバーレーン。

ポーチを扱っているんですが、小さくクラッシックなものでも70ドル(8,050円、1ドル115円)前後と、価格的には本当に高いんです。ポーチってウォルマートやターゲットといったディスカウントショップだけでなく、1ドル(115円)ショップでも売られていますから、正直なんでこんなに高いの!というのが第一印象でした。ところが手に取ってみると、素材がとてもいいんですね。ナイロンが分厚く、ジッパーも大型で開け閉めがスムーズで、ですから一度ストーニークローバーレーンのポーチに慣れてしまうと、他のものは使いたくなくなってしまうんです。

カジョアルなバッグを買える値段でナイロン製の化粧ポーチを買うなんてと、最初から自分用に買う人は少なくて、最初はプレゼントとしてもらって手にする人がほとんどらしいです。ところが一度使うとたちまち虜になってしまい、結果2つ目のポーチは自分で買って(カスタマイズができるので)名前のロゴを入れたり、飾りを施したりしてしまうんですって。ディズニーキャラクターや、ハローキティともコラボしていて、それらコラボ製品もアメリカでは大人気です。

ブルックリンかと思ったら、ブルックリネン。ベッドリネンのショップですが、こちらも高品質をうたっているブランドです。信じられないくらい快適なシーツだと言われていて、トップとボトムに上布団カバーと枕ケースが入ったセットが240ドル(27,600円)。決してお安くはないんですが、アメリカでは大人気です。

この辺りのショップは若者相手というよりはどうやら、高品質を好む成熟層の人たちにターゲットを絞っている感じですね。

変わった名前のお店がありました。アンファッショナル、つまり“流行ものではない”という意味でしょうか。

男性用、女性用、服にアクセサリーと世界中から品々を集めているコンセプトショップらしいです。



現代美術館モマのダウンタウン・ショップがありました。

ミッドタウンにある近代美術館のそばのショップはよく覗きますが、ダウンタウンの方はかなり久しぶりです。モマのデザイン・ショップは日本でも、表参道や心斎橋など何店舗かあるそうですが、扱っている作品は同じでないと聞いたことがあります。マンハッタンの2店舗の場合、同じく扱われている作品もありますが、全体的にはミッドタウンのショップと比べると、少しテイストに違いがあるように感じますね。

ただ今絶賛紹介中なのがこの、ラワイ土器で、落ち着いた色合いながらもデザインがポップ。

今回モマ・ショップで発表されたこの土器たちは、コペンハーゲンのブランド・ラワイとアパルトメント誌を創刊したオマー・ソーサーとのコラボ作品だそうです。また出ました!北欧ブランド。ここでもその特徴の機能性とデザイン性が光っていますね。

写真のコラボ製品、実はコペンハーゲンではなく、ポルトガルの工房で手作りされています。写真にもあるように、深いボウル、浅いボウル、デカンターと花瓶の4つの形がありますが、色の方は落ち着いた色合いが好みならばシナモンや明るい茶色、それにマスタードで、ポップな色合いが好みの場合にはダークブルーやエレクトリックブルー、それにスモーキーグリーンらも揃っているようです。モマ・ショップ限定作品で手作りということもあり、一つ85ドル(9,775円)から140ドル(16,100円)で販売されています。

いえ、目の錯覚ではありません。このカラーグラス、少し曲がっているんです。まるでグラスが踊っているようなので、スイング・タンブラーと名付けられています。

先ほどのラワイとオマーのコラボ作品誕生のきっかけについて雑誌のインタビュー記事を目にしたんですが、ラワイのニコライがエジプトでオマーに出会ったときに、オマーの雑誌に溢れている独特の居住空間に惹かれて、ニコライがその中に置く作品を共同制作したいと持ち掛けたそうです。その考え自体は魅力的だったものの、オマーが熟考して実際にゴーサインを出すまでには3年かかったとか。最終的に二人が同意した言葉が“リスクにチャレンジしてルールを壊そう”だったそうです。

そうした意味ではモマ・ショップ自体も、このグラスなど、まさに既存のグラスという考えを壊した作品ですよね。アメリカ人はリスク・テイカーが好みなのか、このスイング・タンブラーは去年のホリデーシーズン、爆発的に売れました。

モマ・ダウンタウンには、日本の奈良美智さんの作品も置かれています。奈良さんの作品はアメリカでは大人気で、2010年にはアメリカの文化に貢献したとして、ニューヨーク国際センター賞を受賞されています。これはアジア人ではヨーヨー・マに次ぐ快挙だそうですよ。

右端には草間彌生さんとモマとのコラボのお財布でしょうか。草間さんもアメリカでは大人気のアーティストのお一人で、去年の夏もブルックリンの植物園で作品展示されていました。ルイヴィトンとのコラボ製品は、5番街フラグでもあっという間に売り切れたとショップのスタッフの人から聞きました。

モマ、何時訪ねても楽しいですね。既存のデザインを破壊して、そこから生まれる何かを求め続ける…難しいことを仕掛け続けてるショップです。ラワイ・ブランドのニコライのデービッドが、“人は努力して成功すると、ようやくたどり着いたその場にしがみついてしまって、その成功の場を追われる恐怖からリスクを取ることが怖くなるものなんだ”とインタビューに答えていました。“それでも、その成功をいったん壊さない限り、もっと大きな成功は得られないのさ”と。

さて、如何でしたか。

ニューヨークほどこの、破壊と創造がにつかわしい街もないように思います。移民から定着した人々が創り上げる街の景観、そんな人々のお気に入りのレストラン、ファッション、そうしたすべてが刻々と変化していく街。

ソーホーはその昔、アーティスト達が集う場所でしたが、地価が高騰して以来多くのアーティスト達はブルックリンへと移っていきました。そうして今のソーホーは、世界中からのインディーブランドのフラグシップ店で溢れています。ファッション業界のアーティスト達が、自分たちの主張を、この小さな地域のあちこちで訴えていて、昔とは少し違うものの、それでも新しいエネルギーに溢れているんです。

ではまた、そんなニューヨークでお会いしましょうね。

『ソーホー散策』ニューヨーク・ニューヨークVOL.130Takashi -タカシ-

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