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『マンハッタン話題のショップ』ニューヨーク・ニューヨークVOL.155

マディソンです。

今日はソーホー話題のショップ、アザーランドを訪れようと思っているんですが、その前にコーヒーショップに寄って、カフェラテ片手に少しマディソン街を南下してからにするつもりです。風はまだ寒いんですが、とってもお天気がいいので。

マディソン街と72丁目の角にある、このラルフズ・コーヒーはいつも賑わっています。

実はコロナ以前の2017年ごろから、デパート販売と独立ブティックの両方で勝負してきたハイブランドたちは苦戦を強いられ、デパートも、また独立店も次々閉鎖、撤退していく流れがありました。コロナ・パンデミックはもちろん、そんな状況に追い打ちをかける結果になったと思います。

とはいえ、アメリカ人のライフスタイルに沿うアメリカ的ブランドの代表ともいえるラルフローレンを根強く愛する人たちも多々います。ブランドにとって、どうやって顧客の愛を呼び覚ますのかが課題になってきていたといえるでしょう。

そんな中でのラルフズ・コーヒーショップの登場です。2017年の55丁目のフラグシップの閉鎖と同時に、ラルフローレンはコーヒー・ビジネスに大きく資産を投入するべく舵をきりました。



ショップ内に入ると右手に座席、奥にはブテイック、外にも席がありますから、寒くなければ、マディソン街を行き来するおしゃれな人たちを眺めながら、朝の一杯が楽しめるというわけです。

ラルフズ・コーヒーの味の起源は実はマンハッタンではなく、フィラデルフィアに1994年にオープンしたコーヒーショップがもとになっているそうです。コーヒーをこのショップで買ったり、ラルフローレン・サイトで購入して、自宅で楽しむことももちろんできます。一袋17㌦(2,261円、1ドル133円。)食器やカップだけではなく、トートバッグやシャツといったグッズも取り揃えていて、そのラインナップはまるでスタバ並みですね。

そう、ラルフズ・コーヒーはもしかしたら、スタバになろうとしているのかもしれません。今や世界中の人たちが朝スタバのラインに並んで、それぞれにカスタマイズされた一杯を楽しんでいます。そうしてスタバというブランドの愛用者となるわけです。一方ラルフローレンのアパレルはというと、10ドル(1,330円)以下というわけにはいきません。愛用者の裾野を広げること、それがラルフズ・コーヒーのミッションのような気がしてきました。

ちなみに、このラルフ・テディのイラストのタンブラーは50㌦(6,650円)、さすがハイブランドですね。

今はモノではなく、体験が好まれる想像的経済の時代だと言われています。その結果、どの高級デパートの中にもカフェが入っています。となると同じレベルのカフェでは、ラルフローレンというブランドを際立たせることはできませんね。

味にも、キャラクターにも、すべての面で凝ったマーケティングが要ることになります。その結果、ラルフズ・コーヒーはスタバ並みになってきてしまったのではないでしょうか。

さて、今日訪れたかった本題の、話題のショップがここ、アザーランドです。ブランド名を直訳すると、異国という意味。キャンドルショップなんですが、表に“90年代の屈託のなさ”というミッションを提示しています。とっても面白そうなショップです。



キャンドルというと、古くは3000年以上前のエジプトが起源だとか、あるいは中国だとか言われているんですが、近年特に広く人々に愛用されているのが、アロマキャンドルなど、香りのついたものなんですね。

特に、コロナ・パンデミックで自宅で過ごす機会が増えた人たちは、自宅をより快適な場所にしようと、心地よい香りに熱中し始めました。これはアメリカだけでなく、イギリスでも熱狂的なフレグランス・キャンドル・ブームが起きたようです。

今回紹介しているアザーランドは2018年にブルックリンで創業されているので、コロナのタイミングを狙ったわけではもちろんないんですが、まさにそのコロナ・パンデミック直前に立ち上げられた、ということになります。

で、なぜラルフズ・コーヒーから今日来たかというと、このアザーランドを立ち上げたアビゲール・クックストーン、実は以前はラルフ・ローレンのアート・コレクション部門で働いていたそうなんです。成功した実業家はみな、自身のテイストのアートを収集しますが、ラルフも、そのために一部門を自社に設けるくらい熱中している、ということなんでしょう。



アビゲール自身も、大のフレグランス・キャンドル好きだったようで、それが高じて自身のブランド・キャンドルの創作を始めたんだそうです。

実は私の場合にはパンデミックの後になるんですが、著名人を会員に持つクラブ“ソーホーハウス”を訪れた折、入り口に入るなり、何ともかぐわしい香りに包まれて、是非この香りのキャンドルが欲しいとスマホで撮影、自宅に戻るなり購入しました。ソーホーハウスはロンドンから世界中に広がっているクラブなので、内装もマンハッタンではなく、ロンドンのソーホーを彷彿させるつくりになっています。だからなのかもしれませんが、イギリス人に人気のフィグ(イチジク)の香りがベースのキャンドルでした。それにローズや他のハーブを合わせて、何ともいえない素敵な香りに仕上がっていたんですよ。

中サイズで55㌦(6,650円)だったので、これなら手が届くと購入したんですが、数ヶ月で中サイズが売り切れになり、300㌦(39,900円)の大サイズしかないということで、アマゾンでフィグをベースのほかのキャンドルを購入したんですが、どれも今一つ。そういう事情で一度アザーランドを訪ねてみたかったんですね。



只今アメリカで一番人気のキャンドル・ブランドがこの、アザーランドなんです。最もオンライン販売がメインなので、ここはオンライン・ブランドがそのブランド・イメージを披露できるショップ、ポップアップではないものの、それに近い感じでしょうか。

創業者のアビゲールによると、彼女はもともとフレグランス・キャンドルが大好きで、とはいえ本当にいい香りのものは驚くくらい高額なので、高品質キャンドルを安価な価格で届けたいとアザーランドを立ち上げたの、とフォーブス誌のインタビューに答えていました。

もともとマンハッタンの富裕層や社交界では、パンデミックのずっと以前から高額キャンドルは人気でした。マンハッタン郊外の富裕層別荘地のイーストハンプトンでは、ロンドンに本拠地を持つジョー・マローンがハウス・パーティで何十万、何百万円も一度に売れたと聞いて驚いていたものです。アムウェイらが洗剤をハウス・パーティと称して販売する仕組みは聞いていたものの、キャンドルのハウス・パーティというのは不思議でしたが、社交界マダムの中には、自身のお気に入りの香りを自慢したい気持ちがあり、そんな自尊心をくすぐるビジネスモデルだったんでしょう。



アザーランドのすぐそばに、面白い画廊がありました。アメリカではおなじみのキャンディ、チョコレート味のトッツイロールが描かれていたり、本物そっくりの巨大化したライフセーバーが飾られていました。

ライフセーバーの模型アートは初めてみたんですが、描いているものは以前、アンディ・ウォーホールの作品の中に見た記憶があります。

トッツイロールは1907年から、ライフセーバーの方も1912年ごろから売られているらしいので、アメリカ人にとっては本当に馴染みあるキャンディ、それらがアートとして表現されているんですね。

さて、如何でしたか。

香りはもちろん個々の過去の体験の潜在意識の中で深くつながっていると思いますが、子供のころに食べた味もまた、懐かしくいろいろ思い出すきっかけになりますね。しかもそれが、高額なものではなく、安価になるきっかけをテクノロジーの進化が促してくれたということなんでしょう。

ラルフズのコーヒーを味わって、その後のアザーランドでは、いろんな香りを試したかったので、売れ筋製品とフィグベースなど3種類の小サイズセットを購入してきました。いろいろ試すのが今からとっても楽しみです。

ではまた、ニューヨークでお会いしましょう。

『マンハッタン話題のショップ』ニューヨーク・ニューヨークVOL.155Takashi -タカシ-

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