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『5月のニューヨーク』ニューヨーク・ニューヨークVOL.158

マディソンです。

こちらはマンハッタンの5つ星ホテル、プラザホテルの正面玄関。どうやらブライダル・コレクションの撮影のようです。

ニューヨークでは、9月と2月のコレクションの他に、ブライダル・ファッションウィークも毎年あって、今年は4月の11日から14日にかけて、2024年の春夏物コレクションが行われていました。とはいえ5月のこの時期、コレクションウィークだけでなく、デザイナーたちが独自に、街のあちこちで撮影しているところをよく見かけます。春が来てようやく暖かくなり、肩を出したドレスでも寒くない蒸し暑い夏の撮影は、ヘアメイクにとってもスタイリストにとっても大変なので、それでこの時期が撮影ラッシュとなっているようです。

ミーティングがあったのでプラザホテルに入ったところ、何とも香しい蘭の香りに包まれました。色とりどりの蘭の花、花、花…さすが、数々の映画にも登場したホテルです。

プラザは、最近ではホームアローン2の舞台としての方が知られているのかもしれませんが、クロコダイル・ダンディ、フィッシャー・キング、古くはアニー・ホールなどなど、数十作ものハリウッド映画の舞台になってきました。中でも私が個人的に最もプラザらしいと感じたのが、スコット・フィッツジェラルド原作の“華麗なるギャッツビー”で、1973年にロバート・デニーロ主演で大ヒット、その後レオナルド・ディカプリオ主演で2013年にリメイクされています。実はどちらの映画の場合にもプラザホテルが重要な役割を果たしていて、ホテルの内装に不安を掻き立てられたディジーの車が暴走、マートルをひき殺してしまうというストーリーで、愛するディジーをかばってディカプリオ演じるギャッツビーが罪をかぶるんですね。

こんな素晴らしいプラザの内装に不安をかきたてられるデイジーって?なぜディカプリオが彼女に焦がれるのかがわからないのですが、きっと神経症の女性なのではないかという気がします…。

こちらは57丁目にある日本クラブ・タワー内のパーティ会場です。知人のビジネスが50周年を迎えて、そのお祝いにやってきました。

ニューヨーク日本クラブは、1905年に高峰譲吉氏が立ち上げられた会員制クラブです。高峰氏は石川県金沢市出身、科学者であり実業家で、タカジアスターゼやアドレナリンを発見してアメリカで巨万の富を築いたそうです。

大蛇パフォーマンスを披露されたのが、ニューヨークの日本パフォーミング・アートの方たちで、この団体は古典的な日舞を広めてきているばかりか、近年ではニューヨーク近郊で盆踊りのパフォーマンスも多々行っています。

マンハッタンのミッドタウンの中心で、日本のアートが披露されているのが、何とも不思議に思えました。

次のミーティングがダウンタウンだったので、タクシーで南下していると、チャイナタウンを通りました。

マンハッタンのチャイナタウンは昔、イタリアンタウンのリトル・イタリーと隣り合っていたんですが、近年急成長して、いつの間にかリトルイタリーはごくごく小さな地域へと縮小を余儀なくされています。それに比べてチャイナタウンの方は人口15万人に達したともいわれていて、今やチャイナタウンとしては世界最大規模に成長しました。

ただこの地域ばかりでなく、マンハッタン郊外のクィーンズ地区にあるフラッシング地域や、ブルックリン地区にあるサンセットパーク地域でも近年チャイニーズ人口は爆発的に増えていて、それぞれ3万4千人近くが住んでいるそうです。

チャイナタウンの近く、フェデラルプラザに面したこのパーク、何やら不思議な巨大オブジェがあちこちに散りばめられています。

去年2022年の春に設置されたこのオブジェ、13ヶの月と名付けられていて、ペルーのアーティスト、ハイメ・ミランダ・バンバレンの彫刻です。その1つ1つが、一本の木をくりぬいて創作されているんですが、一見した感じでは、金属でできている飛行物体が宇宙から舞い降りてきたかのようなんですね。近くによってはじめて木製だったことがわかるほど、完全な球体にくりぬかれています。木がこんな丸い形をしているわけがない、そんな風に私たちの脳は判断してしまいますが、その定見を打ち破ることがアート、ということなのでしょう。

ダウンタウンのケイト・スペード店の前を通りました。パラソルとスカートの広がり方が、うまくマッチしています。いつ見ても、鮮やかなくらい明るく楽しいファッションです。

近くに何かと物議を醸しているZクレイヴのショップがありました。見たところ、かなり主張が強いこのスタイル、ヒラ・シュトーク・ズィグドンが2017年、まずオンライン販売で立ち上げたアパレル・ブランドです。彼女いわく“デザインはあくまで大胆で奇抜、この服を着ている女性たちが望んでいることはただ一つ、写真に撮られることなの”なんだそうです。このコメント、いかにもインスタ時代起業のブランドといえますね。

大胆なスタイルだけが注目されているかといえば、“Zクレイヴの250ドルもするドレスを買ったら中国製で、まるでハロウィンのコスチュームのようだった”と上げている人気ファッションユーチューバーたちも多数いて、それに対して、“近頃はみんな中国製なのだから、中国製=粗悪ではない”という議論まで巻き起こって、炎上でますますブランド名が認知されていっているという側面もあります。

ローマン・アンド・ウィリアムスという、素晴らしくアーティスティックな家具屋さんがあるんですが、家具ばかりではなく、アートギャラリーやレストランも併設しています。位置的にはソーホーとトライベッカ、そしてチャイナタウンの3つの地域の接点のような場所にあって、店舗のムードはというと若干トライベッカよりでしょうか。

ラ・メルシーというこのフレンチ・レストラン、いつ来てもいっぱいです。価格的にはアペタイザーでも20ドル(2,680円、1ドル134円)前後ですし、メインコースは35ドル(4,650円)で、それに必ずワインを皆飲んでいる様子なので、チップや税金を入れると一人1万円はするでしょうに、お昼から一日中いつもいっぱいなんです。

さて、如何でしたか。

ニューヨークの夏はとても蒸し暑く、それで富裕層の人々は自然の緑に囲まれたアップステイトや、イーストハンプトンの海岸近くの別荘地へと逃げだして、代わりに街は毎年観光客でいっぱいになります。コロナの間はそんな人々の動きが息をひそめていましたが、ようやく完全復活しているようで、爽やかな5月では、夏を前に街をまだまだ楽しもうという意欲をあちこちで感じました。

ではまた、ニューヨークでお会いしましょうね。

『5月のニューヨーク』ニューヨーク・ニューヨークVOL.158Takashi -タカシ-

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