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『バービーピンク溢れるマンハッタンの夏』ニューヨーク・ニューヨークVOL.164

マディソンです。

この夏、マンハッタンはバービーピンクで溢れています。というのも、7月21日に公開された映画“バービー”が全米で大ヒット中だからなんですね。

監督のグレタ・ガーウィグが公開からわずか3週間で、女性監督で初めて興行成績1ビリオンダラー(1,450億円、1ドル145円)越えしました。

ちなみに、これ以前惜しかったのが2017年のパティ・ジェンキンス監督による“ワンダー・ウーマン”で800ミリオンダラー(1,160億円)だったそうです。

とはいえ今回のバービーの場合、作品の良し悪しだけでなく、マーケティングの成功が盛んに報道されています。一説によると、マーケティングにかけた費用は150ミリオンダラー(217億5千万円!)だというから驚きです。でももっと驚くのが、このコストを最初の週で軽く回収したことでした。

春からずっとファッション誌で毎週のように多々のブランドがコラボ作品を発表してきていて、さながらコラボマシーンのようにバービー・ファッションが自動的に映画の宣伝にもなったということのようです。

マンハッタンの高級デパート“ブルーミングデールズ”もコラボに名乗りを上げて、自社ブランドのアクアでバービーファッションの販売を開始しました。その上他のブランドも、バービーにちなんだディスプレィをしているというので、今日はレキシントン街59丁目のブルーミングデールズ・フラグまで、その様子を見にやって来たんです。

デパート内に入ると、まず目に入ってきたのがバービーピンクのロングドレス。リゾート着っぽいデザインです。ドレスはエルベレジェですが、このブランド、過去にバービー人形の方のドレスをデザインしてコラボしていたことがあるようです。

靴はヴァレンティノで、ロングドレスのプリーツの下、足元のキラキラ感が素敵ですね。

エルベレジェがコラボしたのは昔ですが、今年の映画公開にあたっては数十社のブランドがコラボを名乗り出たそうです。

例えばフォッシルなど、映画が公開された7月に先立って3月ごろから、期間限定コラボ製品の販売を開始していました。その結果、同社のメディア露出のほとんど4分の1にあたる24%が、期間限定商品PRとなったそうです。

ザラの場合には、バービーコラボをメディア価値に換算すると6.8ミリオンダラー(9億8,600万円)にも上ったと聞きました。これほどの効果があるなら、ファッションブランドが次々バービー映画とコラボしたくなるわけがわかりますね。

さらに店内を進むと、今度はブロンクス&バンコのドレスにジミー・チュウの靴という組み合わせ。

こちらのブロンクス&バンコは可愛らしくポップなミニドレスですが、通常このブランドのドレス、かなりエッジが利いていて大胆なデザインが多いです。

セレブでは、ジェニファー・ロペスやマイリー・サイラス、ビヨンセらのお気に入りブランドらしいんですが、2009年にオーストラリアでスタートしていて、マンハッタンではソーホーにフラグシップ店があります。

ジミー・チュウのハイヒールは、このミニドレスにピッタリ。夏らしく白、しかも紐状のデザインが、可愛らしいドレスの女性をセクシーに見せてくれる効果がありますね。

デパート内には、バービーにささげる、各ブランドのバービーらしい品々がガラスボックスにディスプレイされています。上はヴァレンティノがバービーに履かせたい靴と持たせたいバッグ。下はバレンシアガですね。

ヴァレンティノやバレンシアガは、何もバービーと限定製品コラボしているわけではありませんが、どのブランドの製品にも、バービーらしさを表現するアイテムが必ずある、ということなんでしょう。流石バービー、ファッションアイコンなんですね。

ドルチェ&ガッパーナがバービーに履かせたい靴は花のデザインが一ひねりあって、大きくロゴが描かれたバッグと合わせると、大人っぽく強いバービーのイメージが浮かび上がります。

比べてボッテガの方は、さらっとした、シンプルなバービーでしょうか。

こんな風に、各ブランドがそれぞれの個性でバービーをドレスアップさせる試み、本当に面白いですね。

ありました。ブルーミングデールズ・ブランドのアクアによる、バービーファッション。

ブルーミングデールズは高級デパートだけあって、ターゲット年齢層が高いのか、弾けたファッションという感じでもなさそうですね。ストッキングは大胆ですが、服のデザイン、少しレトロな雰囲気がします。

実はマテル社のバービー人形、初お披露目は1959年3月、ニューヨークで行われた玩具フェアでだそうです。60年代からの人形だから、レトロ感もしっくりくるということでしょうか。 靴に関していえば、この紐状は、各ブランドとも今年の流行のような気がします。

フロアーの向かい側のブランド、ガニーのデザインの方がよりバービーっぽく感じるのは私だけでしょうか。ガニーは2000年にデンマークで生まれた、いわゆる手が届くラグジュアリーなブランドです。

このブランドの場合、高級ブランドなのか、それともファストファッションなのかという定義が難しいんですね。ドレスが300-500ドル(43,500円―72,500円)というのは、ザラやH&Mに比べると気持ち高いんですが、かといってグッチやシャネルといった正統派高級ブランドよりは安いという…。

近頃ファッション業界では、パリ、ミラノ、ニューヨークだけではなく、コペンハーゲン・コレクションもかなり注目を浴びてきています。北欧ブランド、家具だけでなく服も人気急上昇中なんですね。

あまりにもピンク、ピンクで少し目がチカチカしてきたところに、ワンちゃんの写真がたくさん張ってある巨大パネルと一休み用チェアがあり、少しホッとしています。

ピンク・カラーは昔、フェミニズム運動の敵のように位置付けられた時期がありました。男の子にこそピンクを着せ、女の子にはブルーを着せて意識改革すべきだとあちこちで言われていたと思います。

ところがミレニアルズ世代の台頭とともに、いつの間にピンクはガールズパワーを爆発させる色という見方もできるようになったんですね。そういえばバービー人形も一時期、誰にも到達できそうもない女性の理想像を少女に押し付けるものとして、激しくバッシングされた頃があったと思います。

それなのに、今やバービーとそのピンクと合わせてガールズパワーの象徴になってきたということなんでしょうか。

映画の中で“瘦せてなきゃいけないんだけど、痩せすぎないこと。それに痩せたいなんて言っちゃダメなの。健康的でいたいって言わなきゃ。でも結局痩せてなきゃダメなのよ”というセリフには思わず笑えました。

政治的に正しく、可愛くキレイでいながらも、敵を作らない振る舞いを語るバービー。きっと彼女にも生きにくい世の中なんでしょう。

ではまた、ニューヨークでお会いしましょうね。

『バービーピンク溢れるマンハッタンの夏』ニューヨーク・ニューヨークVOL.164staff

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