ライフスタイルにプラスになる、ファッショナブルな情報を発信。-abox-

1,047

『世界遺産の巡礼旅、イタリア・アッシジを訪ねて』ヨーロッパ写真日和VOL.304

こんにちは、吉田タイスケです。今回からは、しばらくイタリア旅行編をお届けします。訪れる町はアッシジ、ローマ(バチカン)、ガエータの三都市。行先をイタリアに決めた理由は知人が期間限定で現在バチカン市国で働いていること、家人がカトリック教徒であり、コロナ禍も明けたこの機会に三大巡礼地のひとつ(サン・ピエトロ大聖堂)を見ておこうということ、本場のアマトリチャーナが食べたかったこと(←お気楽なワタシ)などです。当初は一ヶ月くらいの休暇をとってキャンピングカーで行くつもりだったのですが、なかなか時間が取れず、結局は11泊12日の旅程でパリ⇄ローマと飛行機で往復+レンタカーで行ってきました。犬猫を引き連れての旅であり、どこもホテルではなくアパートを借りています(自炊もしたいので)。というわけで、一枚目はアッシジのアパートから眺める風景。隣家の庭と瓦屋根の向こうには、サンタ・キアラ聖堂が見えています。

同じ窓から外を眺める我が猫ノアさま。猫は移動がストレスになるとは言いますが、ノアは旅に出てもいつも快食快眠快便、リラックスした様子で過ごしてくれるので助かっています。

聖地の窓からの光で、今日も神々しいお姿。

おっと危うく猫ブログのまま終わるところでした。早速外を歩きましょう。ちなみに今回のアパートは、この階段の中腹まで降りたところにあります。

アッシジの町自体は高台に位置し、見晴らしの良さは一景に値しますが、その代わりどこもかしこも階段と坂道です。

運動不足にはなかなかに堪える造り。この日のヘルスデータを見てみたら、上がった階数は「57階」となっていました。え、、57階!?

「そんなの全然へっちゃらだよ、アミーコ!」

犬連れでダンディなアッシジャン(パリジャン風に)のムッシューがいらしたので、一枚お願いしました。アッシジに生まれ、ここで暮らしているピエトロさん。帽子はアルマーニ、ショートなトレンチコートもお似合いです。

さて、しばらく歩いて聖フランチェスコ大聖堂(13世紀に完成)に到着。この聖堂と関連修道施設群は世界遺産にも指定されています。ちなみになぜアッシジかの説明が抜けていましたが、ここもカトリック教徒にとって重要な巡礼地のひとつだからです。

「アッシジの聖フランチェスコ」を知らない人でも、「憎しみがあるところに愛を、争いがあるところに赦しを、分裂があるところに一致を、疑いのあるところに信仰を、誤りがあるところに真理を、絶望があるところに希望を、闇あるところに光を、悲しみがあるところに喜びをお与えください」というくだりの「聖フランチェスコ平和の祈り」は聞いたことがあるのではないでしょうか(←ワタシがそうでした)。

実際には聖フランチェスコ作ではない「平和の祈り(詠み人知らず)」ですが、その名前を冠することがふさわしく思える、中世イタリアにおいてもっとも著名且つ慕われている聖人のひとりです。

カラフルな聖フランチェスコ大聖堂内部。アッシジで生まれ、アッシジで亡くなった聖フランチェスコを慕う人々が、今も世界中から足を運びます。

教会の身廊には、ジョットによって描かれた28枚のフレスコ画、「聖フランチェスコの生涯」が並びます。この絵は貴族の息子として生まれたフランチェスコが父親の前で、「あなたからいただいたものを全て放棄します。これからは天の父を“お父さん”と呼びます」と着ている服も全て脱ぎ、文字通り「貧しき者は幸いなり」を実践している瞬間。現代ならすぐに捕まってしまう場面です(←オイ)。

こちらは十字軍が盛んだった当時、愛と平和のみを信条とする聖フランチェスコがエジプトに渡り、イスラムのスルタンの前で、「今からあんたのとこの司祭とオレが燃え盛る火の中に入ってさ、もしオレが無事だったらスルタンさん、あんたもキリスト教になっちゃえば?」とものすごい度胸を見せている場面です(結局イスラム教の司祭は逃げ出した)。

そしてこちらが有名な「鳥への説教」を描いたもの。伝承によれば、万物兄弟の思想を説いたフランチェスコは小鳥やオオカミなど、あらゆる創造物たちを愛し、心が通じ合ったと言われています。「鳥たちよ、君たちが美しい羽を持ち、日々の糧を得られるのは偉大なる父のおかげなんだよ」と説いている場面。決して公園の鳩おじさんではありません。万物を兄弟として愛したフランチェスコは、20世紀後半になって教皇ヨハネ・パウロ二世によって「自然環境保護の聖人」として指定されています。

さらに見どころとしては、フランチェスコ修道会の修道服も。腰には「清貧、純潔、服従」の象徴として3つの結び目のあるロープ。何かに似ている姿、、はい、「フォースとともにあらんことを」のジェダイローブのモデルになったとも言われています(吉田ノルマンディー・データバンク調べ)。

動物と心を通じ合えた聖人というわけで、犬連れで参拝に来ている人も多く見かけますが、動物は教会内には入れません。

「ちぇ、お留守番かよー」

フランチェスコはきっと、入っていいよと言ってくれそうだけどね。

さて、腹が減っては戦だけではなく巡礼もできません。参道での食べ歩きもご紹介いたします。こちらの惣菜店に置かれてはいたのは、、

ポルケッタ=仔豚の丸焼き。

これをその場でシンプルで美味しいサンドイッチにしてくれます。丸焼きバンザイ。イタリア滞在中、この「ポルケッタ」は何度も食べました。

そして、この地方のものではありませんがイタリアはプーリア州禁断の銘菓「修道女のおっぱい(tette delle monache)」を販売しているお店を発見。シュー皮よりもずっとソフトな薄皮に包まれているのは、口溶け柔らか&フレッシュなカスタードクリーム。一度食べたら生涯忘れられない背徳の美味は、ネーミングどおりです(?)。プーリアを訪ねた際に一度だけ食べていたのですが、まさかアッシジで再会できるとは。

参道グルメを楽しみつつ、アッシジ旧市街を歩きます。

駅や空港、街中でも地面に直接座るのがヨーロッパスタイル(かも知れません)。

中央広場に面した、1870年創業のカード・ノートブック店「ZUBBOLI」。

Libreria Tipografia Zubboli
https://www.zubboli.com/

ついつい買ってしまう、古風な紋様のカードが並びます。

風船を持って歩く親子。

訪ねた場所を全て紹介していると誌面(スペース)が足りませんので、少し飛ばして、続いてはフランチェスコが神の声を聞いて最初に修復したというサン・ダミアーノ修道院をご紹介します。

アッシジの麓にあるサン・ダミアーノ修道院へと続く道。歩いて15分ほどですが、勾配はかなり急です。57階になるわけだ。

右手にはのどかなオリーブ畑が広がります。ああ膝がもうつらい、このままオリーブ畑で昼寝をしてしまいたい。いや、ここで倒れるわけにはいかない、神が私を呼んでいるのだから←いや、呼んでいない。

ほどなくして辿り着いた、サン・ダミアーノ修道院入り口。

内部の身廊はとてもシンプルな造りになっていて、正面上部には祈るフランチェスコに語りかけたという当時の十字架(複製)が架けられています。圧倒的な装飾で彩られた先の聖フランチェスコ大聖堂とは対照的で、ここにこそフランチェスコが目指した清貧、心の闇を照らす信仰と希望が息づいているように感じられました。自分はキリスト教者ではありませんが、人類の営みとしての宗教には常に興味があります。

壁に描かれた大部分が剥げ落ちたフレスコ画。「本当の美しさは、不完全を心の中で完成させた人だけが見出すことができる(岡倉天心)」という言葉を思い出しますね。

聖フランチェスコに最初に帰依したひとりであり、のちにフランチェスコ会の女子修道会を創設した聖キアラ。教会隣にある彼女たちが過ごした修道院も、合わせて見学することができます。

当時(13世紀)の面影を残す礼拝堂。

フランチェスコ同様貴族の娘だったキアラは、16歳の時にフランチェスコの説教を耳にして心を動かされ、全てを放棄して神に従う人となりました。以後40年間の生涯、神の愛を傍に清貧と謙虚のうちに生き、亡くなる時でさえもわらを敷いた床の上だったと伝えられています。現在その場所には十字架が架けられ、花が手向けられていました。

「巡礼」とは普段の日常空間から離れて、遠くの聖地や聖域に参詣して戻ってくること。「俗」→「聖」→「俗」という流れを通じて、「生まれ変わる」儀式でもあると言えます。聖フランチェスコの足跡をたどって、果たして自身の何かが生まれ変わるんでしょうか。いやー、相変わらず煩悩だらけで、欲しいカメラは増えても全てを手放すのはちょっと、、。

アパートに戻ってくる頃には、すっかり日が暮れていました。夜のアッシジ歩きは観光客もいないし、趣があってオススメです←自分も観光客。ちょっとした異世界探訪気分で。

最後に泊まったアパートをご紹介します。飾られた銅鍋が中世感(?)のあるキッチン。

Nonna Flo
https://www.gites.fr/gites_nonna-flo_assise_h4472402_en.htm

天井のランプがレトロでイイ。

小さな食器棚は、持って帰りたいくらいイイ。

食器棚の中には紙が貼ってあり、置いてあるティーカップなどにお婆ちゃんの家感(←謎)があって、それもまた良いんです。

このブログの最初の写真を撮影した、踊り場の窓。

階段を登ったところにある衝立て。ウールの刺繍でしょうか。木製のフレームもレトロで、この幅の広さが素晴らしい。これも持ち帰りたい、、(何も持ち帰っていませんが、念のため)。

よくぞこのサイズの家具を二階に入れたものだ、、と思える家具が並ぶ寝室。

そしてもう一匹の旅のパートナー、スキッパーキの黒犬スキです。以上世界遺産の巡礼地、アッシジを駆け足でご紹介しました。イタリア旅、まだまだ続きます。次回はローマ・バチカン編の予定です。どうぞお楽しみに。

『世界遺産の巡礼旅、イタリア・アッシジを訪ねて』ヨーロッパ写真日和VOL.304Takashi -タカシ-

関連キーワード

関連記事