ライフスタイルにプラスになる、ファッショナブルな情報を発信。-abox-

334

『ゼロ+マリア、ゼロが意味すること』ニューヨーク・ニューヨークVOL.109

(写真:ZMC_SS21_19_MatthewKristall)

今日は、マディソンです。

ノリータ地区に来ています。近年この地区、高級でトレンディな雰囲気に溢れてきていますね。デザイナージュエリーのショップ、ユニークなファッションブランド、しゃれたホームデザインのショップが多々たち並んできています。トレンディなレストランやバーもすっかり増えましたが、週末にはプリンスストリートに沿って、手作りジュエリーやアートの露店が立ち並んで、そんなカジュアルさもこの地区のアクセントになっているようです。

今回は、ノリータ地区に増えてきているユニークなファッションブランドの一つ、ゼロ+マリアをご紹介しますね。

(写真:ZMC_SS21_08_MatthewKristall)

(写真:ZMC_SS21_16_MatthewKristall)

ゼロ+マリアのデザイナー、マリア・コルネホは南米チリ出身のデザイナーですが、ショップを立ち上げた時、そのアトリエをゼロと命名しました。

ゼロは、何を足されても引かれてもいない始まりの数字、出発を意味しているからだそうです。この考え方は、実は彼女のスタイルにも通じていて、1枚の生地からドレープしてカットされて作られる彼女の服は、多くの女性にフィットしやすいよう、出来るだけ縫い目を少なくしているそうです。彼女のデザインは、その幾何学的形状でもよく知られていますが、円形を出発点としてボリュームを出し、その洗練された角度のカットで、予想外にシンプルな服に着地するという意外性もあるんです。

写真のフーディーも、袖から脇にかけてのなだらかなラインに、彼女のデザインの特徴が表れていますね。

(写真:ZMC_SS21_27_MatthewKristall)

(写真:ZMC_SS21_26_MatthewKristall)

シンプルなのにフェミニンでエレガント。ふんわりと吹き付ける優しい風がドレープを強調してくれそうです。

マリアのビジネス・パートナーであるマリシア・ウォレニヤッキが、彼女のビジネスに参加したのが2005年。翌2006年、二人は正式にパートナーズ契約を結びました。以来2人3脚でビジネスを発展させてきて、現在のノリータのフラグシップ店をオープンしたのは2009年のことだそうです。マリアの独特なデザインの熱狂的ファンは多く、コレクションはこのフラグだけでなく、マンハッタンではミッドタウンの高級デパート“バーグドーフ・グッドマン”でも扱われています。日本ではバーニーズ内にショップが出ているそうで、世界各国の小売店70店舗に出店しています。

(写真:ZMC_SS21_09_MatthewKristall)

(写真:ZMC_SS21_11_MatthewKristall)

何というか…洗練されているのに土の香りがするんですよね、都会の香りというよりは。大胆なデザインなのに、決して奇抜にならない、不思議なセンスです。

南米チリに生まれた彼女ですが、まだ子供の頃に、一家は母国チリの政治的弾圧から逃れるためイギリスに移住します。デザイナーとしてのキャリアをロンドンでスタートさせた後は、リッチモンド・コルネホとのパートナーシップで、パリやミラノ、東京でも活動、やがて自身のマリア・コルネホというブランドを立ち上げました。当時はジョセフやジグソーという、イギリス小売大手のクリエィティブ・ディレクターとしても活躍していたそうです。

ニューヨークには1996年移り、2年後の1998年には最初のショップをオープンしています。その頃から既に、独特の生地の裁ち方を極めようと精進してきたようで、その追及されたシンプルさが、彼女のデザインを解放し、より自由な表現を可能にしてくれたとインタビューに答えています。

(写真:ZMC_SS21_21_MatthewKristall)

(写真:ZMC_SS21_23_MatthewKristall)

こうしてみていても、シンプルなミニマリズムでありながら、その何処かに意外な驚きが隠されています。決して奇をてらってはいない、あくまで自然なフェミニンさが驚きに通じているんですね。そこがリアルな女性に支持されるデザインと言いますか…。

2006年にはアメリカン・ナショナル・デザイン賞を受賞。以来ニューヨーク・コレクションの母体であるCFDA(カウンシル・オブ・ファッション・デザイナーズ・アメリカ)のメンバーとして活動しています。CDFAは2003年の発足当時からのメンバーでしたが、2019年には役員にも就任しました。

責任ある製造とデザインを訴え続ける彼女の姿勢に対して、2010年にはエコへの挑戦賞を受賞、2017年には3人のトップエコ指導者としても表彰されています。フェミニンだけれど自立した強さを秘めて、しかも環境への配慮を忘れない女性たちのためのファッション。マリアのファッションへの人気は単なる広告ではうまれない、彼女のデザイナーとしての姿勢そのものへの支持だと言えるでしょう。

(写真:ZMC_SS21_04_MatthewKristall)

(写真:ZMC_SS21_01_MatthewKristall)

マリアのコレクションは、地元で製作されています。その84%がニューヨークのガーメント地区で。わずかに16%を占めるのは、靴やニットの製造で、それらはイタリアやボリビア、ペルーと一部中国でも製造されているそうです。

また、製造された被服は、100%環境で堆肥化ができる素材によるパッケージで世界のショップに流通しているそうです。しかも環境に対する配慮は近年の世界的な温暖化運動によるものではなく、彼女がブランドを立ち上げてすぐの、20年以上も前から取り組んでいるテーマでもあるそうで、南米の自然の中で育った彼女のバックグラウンドを貫く姿勢がここにも現れていますね。

(写真:ZMC_SS21_12_MatthewKristall)

マリアのデザイナーとしての責任ある姿勢はもちろんですが、そのしンプルでありながらしなやかでフェミニンなスタイルを支持するセレブたちは多く、ハリウッドでは2度のゴールデン・グローブ賞に輝いたマリッサ・トーメィや映画“プラダを着た悪魔”でお馴染みのアン・ハサウェイ、スーパーモデルのクリスティ・ターリントン・バーンズ、世界的テニス・プレイヤーのセレナ・ウィリアムスなど、延々と顧客リストは続きます。

そんな中でも一番のごひいきは、元大統領夫人のミシェル・オバマでしょうか。彼女、マリアのコレクションを身に着けて、数えきれないくらい雑誌の表紙を飾っているんです。

(写真:ZMC_SS21_13_MatthewKristall)

さて、如何でしたか。

このデザインの場合、裾にアクセントがありますね。マリアのコレクションを見るたびに、本物の女性らしさって何だろうと考えさせられます。というのも、彼女のスタイルの女性らしさには、可愛らしいフェミニンさではなく、どっしりとした“母なる大地”とでもいうようなおおらかなフェミニンさが感じられるからです。

今のアメリカを生きる女性たちにとって、一番しっくりくるフェミニンさ、ほんの少しの遊び心と合わせて、それが生き生きと表現されています。素敵ですね…。

街も活気を取り戻しつつあって、おしゃれ心も復活してきました。スニーカーもいいんですが、ハイヒールも履いてみたい、そんなパーティ気分が出てきているようです。

ではまた、ニューヨークでお会いしましょうね。

『ゼロ+マリア、ゼロが意味すること』ニューヨーク・ニューヨークVOL.109Takashi -タカシ-

関連記事