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ニューヨーク・ニューヨークVOL.112『コミュニティ型ブティック、カールメイヤー』

(写真:storefront)

今日は、マディソンです。

今回もロウアーイーストサイドに来ています。ロオアーイーストサイドの入り口は、歴史的にはイタリア系移民が定着したリトルイタリーや、中国系移民がショップで働くチャイナタウンでした。ところがソーホーの土地価格高騰でアーティスト達のブルックリンへの大移動が始まり、ウィリアムズバーグ橋がこの地区内にかかっていることから、毎回橋を渡ってブルックリンと行ったり来たりは不便と思うアーティスト達が定着したり、そんな地域のアーティステイックな趣を好むショップが台頭し始めています。

とはいえ元は移民系の地域だったということもあるせいか抗議デモが起こることも多く、政治色が若干感じられる地域でもあります。

今回ご紹介するのは、そんなロウアーイーストサイドにある、カールメイヤーというブランドのフラグシップ店です。


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シンプルでクリーン、高級感はありますが、ドレスアップというよりはプロフェッショナル傾向の服が目立ちますね。年齢層も落ち着いていて、ターゲット層は30-50代でしょうか。

実はダニエル・カールメイヤーのデザインした服は、日本国内でかなり流通しているそうです。彼女がオンライン・マガジン“グロッシィ”のインタビューに答えて言うには、コロナ下でも、日本での販売は順調に増加しているそうです。


(写真:Look 004)


(写真:Look 014)

この女性モデルは20代で、カールメイヤーがデザインする服のターゲット層よりは若いんですが、彼女の服がお気に入りのようですね。実はダニエラ、今年からモデルではなく、仲間や師と仰ぐ女性たちにコレクションを着てもらって撮影しているそうなんです。

白のドレスはまったく露出しない、上品な装い。黒のスーツにはセクシーさは感じられるものの、それは露出によるものではなく、マニッシュに装うことで逆にあふれ出てくるセクシーさなんですよ。ヘアメークも、キラキラな可愛いものではなく、落ち着いた美しさを醸し出しています。


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(写真:KSS21-003)

流行りのハイウエストとオーバーサイズのジャケット、その上この秋流行になりそうなアースカラーの上下です。自信にあふれている強い女性がテーマだと聞いています。

コロナ禍でももちろんオンライン注文はできたんですが、一時期フラグシップ・ブティックの方は閉店していました。その間SNSを使って、金曜日にはコーディネートの仕方を生配信したりと、顧客とのつながりを逆に密にできたそうです。彼女自身、自分の服を着てくれる女性たちとのつながりを感じていたいタイプのデザイナーなので、コロナでそれができて逆に良かったとも言っています。

カールメイヤーはニューヨークのブランドでありながら、ニューヨーク・コレクションに参加していません。コレクションの母体であるCFDAにあえて加盟せず、独自のスタンスでビジネスを展開しているんです。群れないで、仲間とチームで独自の展開をする、お客さまたちとコミュニティーを築いています。もちろん、それはSNSが発達した今だからできるファッションビジネスの運営方法だと言えるでしょう。


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(写真:DSC04460)


(写真:KSS21-004)

ヴォーグで紹介される必要のない、等身大の女性たちのためのデザイン。彼女が目指しているのはそんなデザインで、だからこそ等身大の女性たちの抱えるテーマについて、ダニエラ自身も声を大にして発信し続けています。

例えば昨年11月のトランプ対バイデンの大統領選挙のときがそうでした。結果、ファッション・ブランドなら一年に一度売り上げが最もある一番大切なクリスマス商戦よりも、選挙の動向の方がより気になったそうです。

彼女いわく、“昔は社会的な問題は別次元のこととして、ファッション・ブランドが関わることはタブーだったの。でも今はブランド創造者としての自身の社会的スタンスを明らかにしないブランドは、意味のないブランドして忘れ去られてしまうと思う”と答えています。

デザインの華やかさや品質のいい素材で、その服を着た自分たちが素敵に見えることだけではなく、現代女性たちは今、ブランドが何を考えて服やバッグを創造しているのか、そんな点にも注意を払い始めているということなのでしょう。


(写真:oldmachine)

カールメイヤーの服がお気に入りな層はSNS世代よりは少し上だけれど、コロナ禍でダニエラは、等身大女性のコーディネート・アドバイスをフラグシップ店から生配信し始めました。それをきっかけにQVCなどのテレビショッピング・ネットワークからも、彼女にコーディネートを依頼が殺到、結果、彼女自身の等身大女性たちの役に立ちたいというモチベーションはより強まったそうです。

ファッション雑誌にきれいなページが作れたという撮影では得られない、生の女性たちに直に喜んでもらえることがうれしくて、創作意欲が搔き立てられたとインタビューに答えています。

コロナ禍ではレストランやスパなども閉まっていて、ロウアーイーストサイドの趣は一変しましたし、スタッフやコミュニティーに住む人々の健康を考えて、彼女自身も約18ヶ月店を閉めてしまっていたそうです。

今マンハッタンはほぼ80%以上元の活気を戻しつつありますが、人々の価値観にはパラダイムシフトが起きてしまいました。“今では毎週スタッフたちとミーティングして、早いスピードで進んでいる世界の動きに、自分たちが上手く対応できているのかどうか確認しているのよ”と彼女。


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ダニエラ・カールメイヤーは実は南アフリカ共和国出身です。ニューヨークには大学進学の折、セラキュース大学に入学するためにやってきました。その後、ロンドン・カレッジ・オヴ・ファッションで学びましたが、この経歴だけをみても、大陸から大陸へと、まるで探検家さながらに移動する大胆な女性像が浮かび上がります。

ロンドンでファッションを学んだ後は、プロエンザ・シューラ―や、アレクサンダー・マックィーンといったブランドに関わり、その後2012年に自身のブランド、カールメイヤーを立ち上げました。

ダニエラにとって、創造性とはいつも自分に流れている電流のようなものなんだそうです。だから既に今存在しているものでは満足できなくて、常に新しい何かを生み出すことに駆られていると。


(写真:Shopfront)

さて、如何でしたか。

ダニエラ・カールメイヤーのお気に入りの一つに、20世紀モダニズム文学を代表する、イギリスの作家バージニア・ウルフの言葉で“衣服は、その下に隠された何かの象徴だ”という言葉があります。私たちは服で、身に着けるバッグで、アクセサリーで、自分自身の中にある何かを表現しているということなのでしょう。

ダニエラがパンデミックで何より一辛かったのは、生での人とのつながりが絶たれることだったそうです。服やモノよりも何より、人が一番大切で、そんな人のための服をデザインすること、それが彼女のミッションなんですね。

ではまた、ニューヨークでお会いしましょう。

ニューヨーク・ニューヨークVOL.112『コミュニティ型ブティック、カールメイヤー』Takashi -タカシ-

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