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『マンハッタンで人気の凍結療法』ニューヨーク・ニューヨークVOL.137

マディソンです。

これ、何だと思いますか。 左の部屋の温度はマイナス138.1度をさしています。これは華氏ですので、摂氏にするとマイナス94.5度。向かって右の準備用の小部屋でも華氏マイナス35.5度、摂氏でマイナス37.5度という気温なんです。

こんな過酷な低気温の部屋に入るなんで狂ってる?かどうかは別として、今回は今マンハッタンで大人気の凍結療法をご紹介しましょう。

ミートパッキング地区からチェルシー地区に入るこの辺り、ただ今アメリカで飛ぶ鳥を落とす勢いのカナダ企業ルルレモンも間違いなく出店しています。それにしても同社の勢いは凄くて、1998年にカナダでスタートした折にはヨガ着を販売する会社でした。それが健康ブームに乗ってヨガブームの大波がまずやって来たんです。ヨガというと、それ以前はインドや採食に傾倒している人々の、少しスピリチュアルでニッチな習慣だったのに、みるみる大衆に広がり、今ではザットガールが朝5時に起きてヨガをTikTokに上げるなど、若者に大人気のウエルネス習慣に変わってしまいました。

もう一つルルレモン人気を後押ししたことが、コロナ下でリモートワークも進み、仕事着のカジュアル化が一気に進んだことです。本来はヨガ着だったルルレモンが、カジュアルな普段着市場へと進出、そんな2つの大きな要因で、同社の勢いは今留まるところがありません。2022年第一四半期の販売業績報告でも堂々1.6ビリオンダラー(2,176億円、1ドル136円)の売り上げを達成、昨年比で32%もの伸びを見せたそうです。

ハドソン川沿いのバイク用道路では、30人くらいのライダーたちがグループでミッドタウン方面に向かっていました。マンハッタンの人々の健康意識はコロナ後、かなり高まってきている気がします。

実は健康とウエルネスに関連する業界の世界市場規模は2021年、3,294ビリオンダラー(約448兆円)に達しました。GWIの調査によると、2020年から2025年の5年の間に最も成長しそうなのがウエルネス・ツアー、つまりはウエルネス目的の旅行市場で、20.9%も伸びる見込みだそうです。温泉市場がこれに続き18.1%、スパ市場が17.2%。

面白いのがその次のウエルネス不動産の16.1%で、住宅やオフィスにきれいな空調や優しい自然光など、その場で過ごす人々の健康とウエルネスを重視した不動産市場が成長するらしいんですね。

その次に伸びそうなのがジムなど身体を使って健康とウエルネスに働きかける施設市場で10.2%、メンタルヘルス市場が9.8%、パーソナルケアが8.1%と続くそうです。つまり病気ではない状態を健康とは呼ばずに、健康からさらによりよく人生を楽しめるウエルネスへと、人々の関心が高まってきているということでしょうか。

ありました、リストア・ハイパー・ウエルネスの看板。ダウンタウンはこの6番街の15丁目に位置しています。マンハッタンにはもう一軒、アップタウンの高級居住地区にもありますが、全米でいうと、この2年間で145軒も出店していると聞きました。1ヶ月に6軒出店なので、続々出てきている感じがします。

リストアは2015年にテキサスでスタートした、まだ7年ほど歴史の浅い新進企業です。オーナーはジム・コネリーで、彼は元々プロの野球選手だったそうです。

実は凍結療法自体はコロナ前からあり、メディアでも度々取り上げられていたんですが、コロナで一旦鎮静した感じでした。

凍結療法を案内してくれたのは、アリーナ。彼女も初めてトライした時は正直怖かったそうです。今では“凍結療法の他に、マグネシウム点滴などさまざまな療法を試して快適に毎日を過ごせているわ”と話してくれました。



最初に右側の準備室に入って5秒、身体を慣らします。その後で中のドアを通じて左のメインの小部屋に進むんですが、いわゆるサウナの冷蔵版といった感じでしょうか。

個室内ではトータル3分間を示す時計で残り時間が表示されていますし、音楽も流せます。扉のところ、プライバシーを重んじる人は曇りガラスにできますが、スタッフに注意していてほしい人にはガラスはそのまま。また、ドアは自分で自由に開けて出て来れます。

先日オスカーでの平手打ちで世界中に知名度を上げたウイルスミス、タレントのローラと親しくスキンケア企業を1000億円企業に立ち上げて上場した女優のジェシカ・アルバ、ブラッド・ピットの元妻としても知られているジェニファー・アニストン、それからもちろんアスリートは筋肉回復に頻繁に使っているそうで、サッカー選手のクリスチアーノ・ロナルドや、地元ニューヨークのバスケットボールチームのニックスなどはチーム全員が、そのパフォーマンスを上げるために使っているそうです。コロナの頃、2019年あたりから、次々セレブが凍結療法の効果について発言するようになってきていました。

神経にダメージを与えないよう、靴下に靴、首宛に耳当てはもちろん、手袋は二重に必要だそうです。下着は付けたまま、ローブを羽織って小部屋にはいりますが、帽子は被りたい人のみと聞きました。スキンヘッドの人は被った方がベターなのかもしれませんね。

3分間のトリートメントを終えて出てくるために扉を開けると、外との温度差で凄いスモークができます。まるでドライアイスみたいですよね。

トリートメントは通常週に2~3回ですが、アスリートの人たちは週5回ということもあるそうです。一回63ドル(8,568円)ですが、ただ今キャンペーン中なので2メニューを合わせて69ドルだとか。

凍結療法は、関節や腱などの血流を一時的にふさぐことで、炎症や腫れをおさえてくれるそうで、長く続けることで体脂肪を燃やす働きもあるそうです。

全身で3分間小部屋に入るタイプだけでなく、痛みをおさえるために、身体の部分的に凍結療法を行うケースもあり、その場合には医療従事者の診断によってトリートメントの方法が決められるそうです。写真は、部分トリートメント用の機械。

常駐しているわけではありませんが、医療従事者が関わっているので、近郊の病院と提携しています。リストアではマグネシウムの点滴もうけられますが、注射針をさすので、それも看護婦さんなど専門家が要りますし。



冷えた後に、サウナや写真上のような赤外線セラピーもうけられます。先に温めてから凍結は危険らしいんですが、凍結の後に温めるのは大丈夫とのことでした。光セラピーもアメリカでは今盛んですが、“この赤外線版の間に10分間で、サウナ同様、身体は芯からぽかぽかしてくるの”とアリーナ。冷凍の方も温める方も、どちらもメンタルなエネルギーレベルは上がるそうです。特に凍結療法の場合、モチベーションがかなりあがり、ハイな状態になるそう。

こちらは酸素カプセル。これらは病院から勧められて来る患者さん用で、一般の人々は使用しないそうです。病気で肺の一部を取り除いたために、ベッドから起き上がるのもつらい患者さんが、毎日酸素カプセルに入るだけで、日常生活を取り戻すケースをたくさん見たとアリーナが言っていました。

つまり、腫瘍などで肺の一部を取り除いて、病気ではなくなったものの日常生活を生き生きと過ごすレベルではない人に、リストアは日常生活を取り戻す場所を提供しているんですね。

ウエルネス市場の未来は明るいようで、リストアは去年12月投資ファンドから140ミリオンダラー(188億円)の資金提供を受けています。今後も爆発的に全米に広がりそうですが、グローバル的に広がって、日本にもやってくるかもしれません。

病気ではない状態で満足するのではなく、より健康へ、しかも若々しく生きることを目指すのは、つまり先進国が長寿になってきているからなんでしょう。何歳になっても活動的に生きるために、人々はウエルネス市場のあれもこれもを試していくということになりそうですね。

さて、如何でしたか。

ではまた、ニューヨークでお会いしましょうね。

『マンハッタンで人気の凍結療法』ニューヨーク・ニューヨークVOL.137Takashi -タカシ-

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