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『ホイットニー美術館』ニューヨーク・ニューヨークVOL.45

ニューヨークから、マディソンです。 
ファッションウィークで、コレクション・ショーをはしごしていますが、アフターパーティまでの間少し時間が空いたので、近くの美術館を訪れました。アップタウンのメトロポリタンや、グッゲンハイム、それにミッドタウンのモマなどは何度も訪れていますが、ダウンタウンの、このホイットニー美術館は初めてです。まずはエレベーターで最上階に上がって、上から展示を見て行こうと思いつきました。

最上階のテラスから南の方角に、新ワールド・トレード・ビルが見えます。
秋のファッションウィークは毎年9月の第一から第二週にかけて行われるので、2001年9月11日にワールド・トレードセンター・ビルを襲った同時多発テロは、丁度ファッションウィークの真っただ中でした。9月の方が2月より規模が大きいので、あの時も街はデザイナーやスタッフ、コレクションを見に来る人たちであふれていました。ショーのはしごで駆け足していますが、歩調をゆるめて立ち止まったときには、どうしてもあの日が想いだされてなりません。

ホイットニー美術館の最上階屋内にはしゃれたカフェがあります。スタジオ・カフェといって、オレンジがアクセント・カラーのようですが、オレンジ色好きの人たちが集まるのか、手前の女性はオレンジのパンツ、中にオレンジのジャケットの女性も見えますね

最上階8階の屋内には、マリー・コースの展示がありました。60年代に、変わった素材で明かりと素材のかかわりを探求したアートを制作した人物らしいのですが、単調そうなので7階におりてみます。

ポーカーに興じる男性たちとは対照的に、自分の美貌に酔いしれている女性の絵。ポーカーという題で、トーマス・ハート・ベントン作だそうです。
この階の作品、おもしろそうですね。



7階では、“我々は何処に”というタイトルで、人間関係や、私たちが生きている場所、私たちの活動についてアーティストたちがそれぞれの感性で思いをはせた作品が展示されています。キーワードは家族、仕事、地域社会、家庭、精神性、そして国家、などなどですが、どれもホイットニー所有のコレクションだそうです。
家庭の中で、家具というタイトルに沿って昔の暖房ストーブが描かれていました。ほのぼのと暖かく感じられる、温もりある絵ですね。

ロイ・リヒテンスタインの、バスルーム。60年代の作品だからでしょうか、新しい感じがしますね。ブルックリンの誰かの家に飾ってありそうな絵で、今どきの感覚ととても通じています。NY出身のアーティストだそうで、それも、なるほどと腑に落ちます。
ロイ・リヒテンスタインはアンディ・ウォーホール、ジャスパー・ジョンズらと並んで、60年代のアートシーンをリードした人物だと聞いています。

これは間違いなくジョージア・オキーフですね。生涯、花と動物の骨と風景だけを描き続けた彼女ですが、骨と花には力づいよい立体感があって、まるで3Dアートのように、絵から飛出してきそうです。

リーンカーン大統領の像です。うなだれているように感じるのは、その肩にかかる重圧がどんなに重いものだったか…そんな風に思ってしまうからでしょうか。南北戦争を北軍の勝利に導いて奴隷解放に貢献したリンカーン。ワシントンDC市のナショナル・モールにある記念堂のリンカーンは力強く、訪れる人の心を支え、鼓舞してくれるような感じがしますが、この像は対照的なたたずまいです。

これも見覚えがありますね、ジャスパー・ジョンズです。先ほどのロイ・リヒテンスタイン同様、20世紀を代表する、ポップアートの先駆者ですね。
アメリカ国旗を描き始めたのは1954年からだそうですが、ニューヨークのパーソンズで学んだあと、韓国戦争の折には仙台に滞在したこともあるそうで、日本とも縁のあるアーティストだといえます。

エレベーターがなかなか来ないので、階段で降りてみました。真ん中にライトが降りているのが、とてもしゃれていますね。階段の手すりにかけているのは見たことがありますが、上から直接降りているのは新しいです。
ホイットニー美術館は今回はじめて訪れましたが、一言で言うと、本当におしゃれです。ミッドタウンやアップタウンの美術館の作品は重厚で、これぞアートと正攻法で攻めてくる感じがありますが、ここはダウンタウンでアーティストが居住しているホームな地域のせいか、斜めに少しかわしているような雰囲気がありますね。すっかりファンになりました。

一階に表示されているこの看板、ファッション・デザイナーの展示案内だそうです。
ニューヨーク・ファッションウィークのショーはお得意様とメディア関係者だけが招待されてきた閉鎖的なものから、動画で世界同時に発信され、インスタなどのSNSでさらに拡大リーチされることを意図したものに変貌しつつあります。
そこで従来のランウェイを美しいモデルたちが闊歩しながら服を見せる、というものから、人目を惹くさまざまな仕掛けがショーに施されるようになってきました。いわゆるインスタ映えするショーということでしょうか。
このファッションデザイナーは、ホイットニー美術館の中に、ポップアップスーペースを設けて、新作を展示しているようです。

面白そうなので、次回ご紹介しますね。ではまた、ニューヨークでお会いしましょう。

『ホイットニー美術館』ニューヨーク・ニューヨークVOL.45staff

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