ライフスタイルにプラスになる、ファッショナブルな情報を発信。-abox-

631

『グッバイ、ヘンリ・ベンデル』ニューヨーク・ニューヨークVOL.56

マディソンです。 
この写真はヘンリ・ベンデルのニューヨーク・フラグシップ、最後のウィンドー・ディスプレイです。
今年1月をもって、123年間続いたヘンリ・ベンデルは全米23店舗、それにオンラインの販売サイトも含めて全て閉鎖となりました。

中でもマンハッタンのフラグシップは、同じ高級デパートでも、近所のバーグドーフ・グッドマンやサクス・フィフスアベニューに比べると小ぶりで、それなのに洗練された印象があり、マンハッタンの宝石箱のようなデパートとして知られていたんですね。

全米からマンハッタンを訪れる観光客が、写真にあるような、白と茶色のストライプのバッグや小物入れなどを買って帰る光景が、残像のように心に残っています。



ヘンリ・ベンデルは実は、ビクトリア―ズ・シークレットやベッド・バス&ビヨンドで知られているLブランドの傘下にありました。ところが近年の消費者のデパート離れやオンラインショッピングが盛んになったことで、売り上げは段階的に落ちてきていたそうです。Lブランドはビクトリア―ズ・シークレットが数年前まで盤石だったので、その扉を開け続けてきたという経緯があります。ただ、去年の売り上げが85ミリオンダラーで、営業利益がマイナス45ミリオンダラーという事態に陥ってきてしまったため、オンライン販売サイトすら閉めざるを得なくなってしまったと報道されていました。

本当に残念ですね。他の全米店はともかく、このフラグシップだけは残してほしかったんですが…。

残念といえばアメリカで一番古株の高級デパート、ロード&テイラーもやはり1月一杯で5番街のフラグシップを閉店すると聞いています。そうしてその建物を買収したのが、ウイワークといって、ウーバーやエアー・ビー&ビーらと並んで台頭してきているシェアリング・エコノミー企業の一つ、オフィス・シェアリングのウイワークだそうです。100年という1世紀をかけて巨大化したデパートが、分け合う経済ともいえるシェアリングで急成長している新企業に場所を明け渡すことになります。

実はウイワークはただ今、マンハッタンのあちこちに出没してきていて、5番街ロードアンドテイラーの建物はそのウイワークのフラグシップに今度はなるそうです。

こちらは60丁目、5番街ではなくレキシントン街にあるブルーミングデールズというデパートです。高級デパートの部類に入りますが、ノーズダームなどと並んで、こちらはアウトレットを設けることで、一般大衆への馴染みもよくしています。場所も5番街ではありませんしね。

どうです、このウィンドーディスプレイ。単に美しい、というのではなく奇をてらって、道行く人の注意を惹いて、中に入りたくなる工夫があると思いませんか。パーティ・シーズンにメークアップは大切で、その為の目の表情を、マネキン後ろのマンハッタン高層ビルの窓に映しています。

クリスマス・シーズンの、サクスフィフス・アヴェニューがやはり動画で注意を惹いていましたが、ブルーミングデールズは別の形で関心を引いています。このコンパクトの横の白い縁取りの円型に顔を写すと、

こんな風にコンパクトの鏡の部分に顔が現れるんです。男性でも興味津々なようで、この彼も試していました。

ザラでは、QRコードのセールのサインで、プロモーション・コードを入れれば安くなりますよ、と一目でわかる仕組みですし、やはり入店を促されますね。

こっちは1829年創業、ベルギー王室ご用達のデルヴォー。NYセレブでファッショニスタ、オリヴィア・パレルモのインスタでよく目にするブランドですね。創業者チャールズ・デルヴォーには先見の明があったそうでその逸話があり、ベルギーは1875年にはすでに世界最高の密度の鉄道網が走っていたそうです。チャールズは旅行革命が来る、そうなると女性たちは大切な所持品をスーツケースの中ではなく、手元に置いておきたいはずだと考えて、それでハンドバッグ制作に着手したんだそうです。

この写真のバッグには、表にフランス語で“これはデルヴォーではありません”って書かれているんですね。ミニバッグとも、何ともユーモラスです。

5番街の、左手に見えるビル横に男性が立っているようなペイントがされていますが、これは果たして…?

ルイ・ヴィトンのビルでしたが、今回のコレクションはどうも“オズの魔法使い”に刺激を受けたものだそうです。2015年からファッション・ブランド“オフ・ホワイト”を率いてきたヴァージル・アブローが、ルイヴィトンのデザイナーに就任、その第一作が今回の作品のようです。



彼はシカゴ生まれで、建築家で音楽アーティストでもあるそうですが、立ち上げはストリートファッションからでした。そんな彼がルイ・ヴィトンのデザイナーに就任するとは、やっぱりただ今ストリートが圧倒的に強いようですね。

ただこのヴィトンのウィンドー、ダウンタウンのノーホー界隈にあったキースのディスプレィと、白のスニーカーが似ているんです。

キースはNY発の、スニーカーのセレクトショップとして知られていますから、もちろんストリートの精神をとても大切にしています。昔はマンハッタン、地域によってファッションが全然違っていて、それはそれは厳密に線が引かれて区別されていたんですが、近頃はもうダウンタウンもアップタウンもない感じです。

共通しているのは、マンハッタンのどこであれ、ウィンドーに強いメッセージ性が無いと、誰も店内に入っては来てくれないということでしょうか。ブルーミングデールズなど生き残っているデパートや、高級ブランドはそれを強く意識していると思います。

さて、如何でしたか。ではまた、ニューヨークでお会いしましょうね。

『グッバイ、ヘンリ・ベンデル』ニューヨーク・ニューヨークVOL.56axesedit

関連記事