ライフスタイルにプラスになる、ファッショナブルな情報を発信。-abox-

334

『2019年9月のNYFWバックステージ』ニューヨーク・ニューヨークVOL.69

マディソンです。

夏の間はイーストハンプトンなどの避暑地に行っていたニューヨーカーたちがマンハッタンに戻ってくる頃、毎年春夏モノに向けてのニューヨーク・コレクションが行われます。だから毎年コレクションが始まると“秋が来た!”と思ってしまうんですね。そうしてコレクションが終わると街のデコレーションが一気にハロウィンに向けて加速していく感じがします。

今年は6日金曜日から14日土曜日までの間、マンハッタンのあちこちでショーが開催されましたが、今回は私友人を訪ねてバックステージに入ってきました。

一件目の会場はここ、VRワールドです。ヴァーチャルリアリティ・ゲームが体験できる場所。

ちょうど映画“キングコング”でゴリラが登った、当時マンハッタン最高の高さのビルのエンパイアステイトの、すぐそばにあります。ですから、ミッドタウンの中心で観光客の人たちが一番集まりやすい場所なんです。エンパイアは102階建てで、高さ約443メートルもありますから、かなり遠くからでも見えて目印に便利ですよ。

そのVRワールド隣は、ただ今IPOで話題のウイワーク。シェアリングオフィスで、高級デパートの老舗”ロード&テイラー”跡など、ただ今雨後のタケノコ状にマンハッタン内に増えてきています。ただ市場が予測した5兆252億円の時価総額が、半分以下の2兆1,384億円に下がりそうで、ソフトバンクの孫正義さんなど、IPOに待ったをかけていると報道されているんです。



中は薄暗く、ヴァーチャルな世界に没頭しやすくなっています。バックステージは2階なので階段で上がります。

2階に上がるとすぐ、粋なジャケットの可愛い子犬が。モデルさんに抱かれてショーに登場するんだそうですが、おとなしくて、まるでぬいぐるみのようでした。

いつもはVRゲームのための個室が急遽メークアップルームにしつらえてあります。時間が迫ってきているので、アーティストの皆さん、とっても忙しそうです。

ショーを担当するウォーレン・トリコミのチームも、エドワードの指示を待っているところです。
今回私がこのバックステージを訪ねたのは、友人のエドワードがショーのヘアを担当するからで、彼はなんとジョニー・デップの出世作”エドワード・シザーハンズ”のモデルになったカリスマヘアスタイリストなんです。

ショー会場がVRゲームのセンターというのがとてもユニークなので興味津々でやってきました。彼と彼のチームは、この木曜日のショーを皮切りに、土曜と日曜はWWDがニューヨーク・ファッションウィーク中に行うイベントをサポートすることになっていて、これから一週間の間、あちこちのバックステージを駆け回るスケジュールのようです。

モデルさんたちほど準備の要らないワンちゃんは、待ちつかれて寝てしまっています…zzz。



2件目のバックステージはここ、ソーホーにあるスプリング・スタジオです。ここは正統派のショー会場なので、これから一週間ぎっしりとコレクション・ショーのスケジュールが埋まっています。90年代にまずロンドンでスタートしたこのスタジオは、2015年に北大西洋を越えてマンハッタンにもオープンしました。

マンハッタンには近年、カリフォルニア・ファッションのフラグシップがやってくるかと思うと、ヨーロッパブランドも多々進出してきています。アパレル・ブランドだけでなく、こうしたファッション・エージェンシーやスタジオといった沿革ブランドもやってきているんですね。

アフリカ系アメリカ人で初めてトップスタイリストとなったテッド・ギブソンと、パートナーでヘアカラリストのジェイソン・バックの二人を訪ねてこのバックステージに来ました。

ヘアカット代最高値2000㌦をチャージするテッドは以前、マンハッタンのフラットアイアン地区にヘアサロンを展開していたんですが、アンジェリーナ・ジョリーはじめ映画スターを多々顧客に持つ彼は、数年前からハリウッドに拠点を移しています。今年春にはアマゾンとコラボしたスマート・サロンをオープン、ファッション誌でも大いに話題になりました。

メディアもバックステージを取材にきているようです。メークアップもヘアスタイリングもほぼ終わって、モデルさんたちはショーステージの裏に移動しはじめています。

ステージ裏で最後のヘアチェックをするテッド。

ポーズをとっている女性が今回のコレクションのデザイナーのようです。

実は今回のニューヨーク・コレクションでは、活躍する中国系デザイナーをかなり見ました。高級ブランドというよりは、斬新な若者向けファッションという位置づけのようでした。このショーのブランド名はI Heart Prettyとあります。テッドとそのチームはこの日だけで4つのショーを掛け持ちしていますが、スプリング・スタジオのこのショーを終えれば、他の3つのショー会場はすべてスチュワート・ホテルなので、少しプレッシャーが減ると言っていました。

一つのショーを準備するのに、デザイナーは平均1-2千万円は資金準備が要るので、真剣です。デザイナーの世界を上手く表現できるよう、ヘア&メークのバックステージチームにも、自然と緊張感が伝わります。



そんな緊迫したバックステージから出て、少しホッとしました。歩いていると、ブライアント・パークの横に出てきたんですが、10年くらい前はほとんどのショーが、ここで白いテントが張られて、その中で行われていたんですね。今はとても静かで、シェークスピアの名作、オセロが野外ステージで行われます、との案内が出ていました。

さて、如何でしたか。ニューヨーク・コレクションのステージは、今ではほぼ世界同時に動画配信されています。ですから、昔のようにコレクションはVIP客や著名ファッション雑誌の編集長たちだけの閉鎖的世界では全くなくなりました。ただ、バックステージは今も、限られた美の職人たちだけが立ち会える場所なので、紹介してみたくなったんです。

いよいよ秋ですね。また、ニューヨークでお会いしましょう。

『2019年9月のNYFWバックステージ』ニューヨーク・ニューヨークVOL.69axesedit

関連記事