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『アナ・スイ的世界』ニューヨーク・ニューヨークVOL.71

今日は、マディソンです。マンハッタンはすっかり秋。ファッションウィークが終わるなり、コロンバスサークルにあるアート&デザイン美術館(通称MAD)でアナ・スイ作品の展示が始まったので、早速訪ねてきました。

コロンバスサークルはセントラルパークの南と西の端にある円形広場を円形交差点が囲んでいる場所です。中央にコロンバスの像が飾られているので、そう呼ばれているんですね。右側の高い建物はトランプタワーです。

MAD美術館は、そもそもは1956年にミュージーアム・オヴ・コンテンポラリー・クラフトとしてスタートしたそうです。1986年にはアメリカン・クラフト・ミュージーアムと名前を変え、MOMAのある53丁目にあったそうなのですが、2002年に今の名前のミュージーアム・オヴ・アーツアンドデザインとなり、その後2008年にコロンブス・サークルの現在の場所に移っています。

2012年には、美術館では世界で初めて香りのアートに注目する展示を行い、大きく話題になりました。

アナ・スイの作品展示は、美術館の4階と5 階の2つのフロアで行われているんですが、5階入り口を入ると、まずこのヒッピーとロックスター展示が目に入ります。

彼女いわく、リッチなヒッピーの着る服、というポジションにそそられるそうで、アニータ・ポーレンバーグのようなモデルや、ローリング・ストーンズのギタリスト、キース・リチャードからインスピレーションをもらうとのコメントがありました。

元々は1960年代のカウンター・カルチャーこそが、彼女のコアとなるデザインなんですが、今年はボヘミアン・ルックが戻ってきているので、とてもパワフルで新鮮に映ります。



ケイト・モスのヴィクトリアン・スタイルはヒッピースタイルに少しロマンティシズムが入っています。アナ・スイはファッションの背景には、その時代に人気の音楽が常にあると考えているようで、レッド・ツエッペリンのジミー・ペイジを意識しながら、ポスターにもサイケデリックな感じを出す工夫をしていたそうです。

ニコール・キッドマンのこのスーツなど、丁度終わったばかりのニューヨーク・コレクションで着ていてもピッタリ流行にはまっていて不思議ですね。

デトロイトで生まれた彼女は、ニューヨークでファッションの勉強をして、1981年に自身のブランドを立ち上げました。ロマンテイックで若々しい、しかもロックンロール、というのが彼女の服のイメージです。

90年代に入ると、マーク・ジェイコブス、アイゼック・ミズラーヒ、タッド・オールドハム、ビィビィエンヌ・タムといったデザイナーたちと一緒にアメリカン・ファッションの方向性を示しはじめました。彼女たちは肩パットや企業スーツに反旗を翻して、若者のしなやかさを明るくポップな色合いと、リラックスしたスタイルで確立しようとしたのです。

ポスターも、その時代時代のポップカルチャーを反映した、彼女独特の作風ですね。

テーブルには彼女のデザインの展示が。ランウェイで闊歩するハイブランドのモデルさんたちとは、立ち方もどこか違っていて、コミックチックです。



中国系アメリカ人のアナ・スイに憧れる中国人たちは多いようで、展示会場でもたくさん中国語が飛び交っていました。

このブロックの展示では童話的世界にインスピレーションを受けた作品が並んでいます。彼女がデザインする服には、背景に音楽が流れているようなタイプのものばかりではなく、物語が関わっているものも多々あります。彼女自身童話の世界に魅せられていて、雪の女王やバイキング、海賊らの着ているような服、コスチュームっぽい服も大好きなようです。

レトロというテーマのこの展示は、30年代や40年代の映画のシーンからインスピレーションを受けたとありました。

彼女いわく、単に昔を懐かしむだけの懐古趣味ではいけない、ファッションはその時代を反映していなければならないものだから、過去の流行が戻ってきても、必ずその中に今の断片が入っていなくてはならないそうです。

こちらのタイトルはスクールガール。彼女自身がそうだったように、女学生たちは今も昔も、ファッション雑誌を目を皿のようにして読み、その中から時代のエッセンスを取り入れる名人なんだそうです。スカートの長さも、髪飾りも、靴下の色合いもすべて彼女たちが感じる今を表現しているんですね。

こちらの作品は彼女と彼女のチーム、ヘアスタイリスト、メークアップ・アーティストたちの手によるアート作品というタイトルがついています。

ヘアスタイルはヴォーグ誌が“ヘアスタイリスト業界のゴッドファーザー”と銘打ったギャレンによるものばかりです。彼が手掛けたヘアスタイルは何千冊ものファッション誌の表紙を飾りました。

メークアップ・アーティストとして彼女と組んだのが、90年代時代の兆児とうたわれたパット・パックグラースで、イギリス版ヴォーグで大活躍した彼女、実は生粋のアーティストだったようで、メークアップ・スクールに行ったこともなければ誰かの弟子についたこともない、独学でメークを表現した人物なんです。

もう一人組んだフランス人メークアップ・アーティストがフランソワ・ナーズで、後にナーズ・コスメティックスを創業しました。デザインだけではなく、ヘアもメークアップも、全てにおいて一流の表現者たちと組むことで、彼女独特の世界を確立していったんですね。さて、アナ・スイの世界、如何でしたか。ではまた、ニューヨークでお会いしましょうね。

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