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ニューヨーク・ニューヨークVOL.77『チェルシーがアツイ』

今日は、マディソンです。今回私が訪れているのはチェルシー地区。アンソロポロジーはじめ人気ショップがたくさん入っているチェルシー・マーケットのその中に、テキサスから話題の新形態デパートの“ネイバーフッドグッズ”が2019年12月オープンしたばかりです。

今回の扉は、草間彌生さんのパンプキン。彼女によると“パンプキンは魅力的で愛嬌ある形、気取りが全くなく、しっかりした精神的な土台”なんだそうです。白黒の無機質っぽい感じがコンクリートジャングル、マンハッタンの街にしっくりきていますね。

ネイバーフッドグッズを直訳すると、近所の品々。2017年テキサス州でスタートしたこの新形態のデパートは、オンラインから起業したブランドに棚を貸して、小売スペースを提供するというビジネスモデルです。最近次々閉じているデパートと同じビジネスモデルが何故成長しているのか不思議だと思うんですが、その強みはオンラインでスタートしてショップを持たないブランドのユニークな製品が並んでいる、という点にあるようです。

中に入るとこんな感じ。普通のデパートに比べて、スタイリッシュで緑が多く、床はもちろん木のフローリングです。天井はブルックリン的なインダストリアル。美容製品コーナーもありますが、グロウン・アルケミスト、モウド、ディスコ、ベアフット・サイエンティストなど、これでもかというくらいデザインの素敵なお顔ケアやボディケア製品が並んでいます。

デニムのバッグにはフレグランス、その向こうにはブックストアに休憩所。今ではメイシーズ・デパートに買収されてその店舗内で展開されている“ストーリーズ”も、そういえばこんなイメージの内装で、ミートパッキング地区からスタートしていましたね。ショップのデザイン、とっても似ています。

緑は最近のスタイリッシュ・ショップお約束です。都会の中にあるオアシス、といったイメージにぴったりなので。

チェルシーやミートパッキング地区はここのところ開発が活発なハドソン川沿いにあります。東に少し行くとソーホーなんですが、そのソーホーにも新形態のデパートと銘打った“ショーフィールズ”があるんですね。5番街の伝統的デパートが次々クローズしていく中、絵本“ウォーリーを探せ”ではありませんが、ダウンタウンは新形態のデパートを探しているかのようです。

食べ物も面白いですよ。一番真ん中には“宇宙飛行士のアイスクリーム”といって、普通の冷たいアイスクリームではなく、その形態は日本古来の干菓子のようなものなですが、口に入れると冷たくて触感がアイスクリームというお菓子も売られています。普通のアイスクリームに比べると、3~5㌦割高なんですが、他では売っていないことが大切なんですね。

ネイバーフッド・グッズは去年の9月に約11億円の投資を受けて、今のところトータル25億円規模の資金を調達できています。最初のショップはテキサス州プラノ市だったんですが、このマンハッタン店に続いて、今年はテキサス州オーストン市にもオープン予定だそうです。近い将来、東京にも現れるかもしれませんね。

さて、ハドソン川沿いに数ブロック上がると、以前訪ねたことのあるディビッド・ツリーナー画廊に着きました。今回はここで、草間彌生さんの展示が行われて、マンハッタンの街の話題として大きくメディアで取り上げられています。

彼女の展示には“毎日、愛について祈っている”という、敬虔ですらあるタイトルがつけられていました。

どうでしょう。アルミ製なのに、まるで生き物のようなこのシルバーのオブジェ。何百体と置かれているんですが、雨の雫のように、動き出しそうですね。

彼女独特の世界が広がっています。60年代にはポップとミニマリズムを表現した彼女ですが、MOMA現代美術館で黄色いパンプキンのオブジェが紹介されたり、ルイ・ヴィトンとのコラボレーションなどを通じて、すっかりニューヨーカーの間でも人気が定着しているようです。

これらのアートは「私の永遠の魂」というタイトルで、線とフォルムだけで構成されているシンプルなアートにもかかわらず、その大胆な色彩の使い方で、彼女の魂のパワーが伝わってきますね。


    
こちらが「鏡の部屋-踊る光が宇宙に向けて飛ぶ2019」というタイトルの部屋で、体験型アートになっています。彼女のデザインの核である、“宇宙には限りがなく、相互関係は永遠”という考え方を実際に体験して感じてみようという、初の試みだそうです。



光のダットが飛んでいます。不思議な世界に入り込んでしまったようで、う~ん少し怖い気もしました。

有機体のようなオブジェも命を感じさせます。今回の展示タイトルのように、愛を祈るアートを作り続ける草間彌生さんの、その愛に向かうエネルギーの暖かさが、暖炉のそばに座っているかのような気持ちにさせられますね。

草間彌生さんは、1929年生まれだそうですから、今年90歳になられていると思います。インタビューで、芸術家としては孤高の中、命がけで死ぬまで戦い続けるといわれているのを拝見したことがあります。草間さんが辛かったり苦しかったりしたとき、それを乗り越えてこらたのは芸術への情熱があったからだそうで、ですから今の若い方たちや次世代の方たちが精神的な悩みやつらい壁に面した時に、彼女のアートに勇気づけられてくれることを心から望んでいると言われていました。

90歳でしたら戦争体験もおありだと思います。私たちが想像の範囲でしか知らない、過酷な飢えや、実際に自分の知っている人たちが亡くなっていく悲しさ、街が破壊されていく恐ろしさも味わわれたことでしょう。そんな彼女が命がけで“毎日愛について祈られている。”私たちもそうありたいものです。

如何でしたか、今回のニューヨーク。アツイ、チェルシー地区からお届けしました。

ニューヨーク・ニューヨークVOL.77『チェルシーがアツイ』Takashi -タカシ-

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