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ニューヨーク・ニューヨークVOL.83『モードが持つパワー』

今日は、マディソンです。コロナ・ウイルスで外出禁止になっているマンハッタンの画像が、世界中に流れているようですね。ニューヨーク州クオモ知事の4月1日の発表によると、これまでニューヨーク州内で8万3712人が感染したとのことです。

ニューヨーク州と、お隣のコネチカット州、ニュージャージー州を合わせると亡くなられた方たちの数は2,365人。安倍総理が日本の学校の一斉休校を発表した折、日本はオリンピックまでに何とか収めたいから大掛かりな対策に入ったのだろうと皆漠然と考えていましたが、今ではニューヨーク、学校休校どころか食料品や日用品以外は外出禁止が当たり前になってきています。それでもまだ感染者数も死亡者数も収まる気配がありません。

さて、FIT(ファッション・インスティテュート・オヴ・テクノロジー)大学といえば、ファッションデザイナーを志す世界の若者たちが憧れるニューヨークの大学なんですが、昨年12月10日から、今年の5月10日まで“パワーモード”というタイトルの展示が開催されているんです。もっともただ今はコロナ・ウイルスで休館中なんですが…。

そこで、今回はこのパワーモードについてご紹介したいと思います。こんな時こそ、ファッションの力を借りてパワーアップしたいですから。

今回の展示を監修したエマ・マックレンドンによると、服のパワーといって私たちが最初に思い浮かべるのは、軍服なんだそうです。確かに軍服を着ている人々には、他を威圧する力があるように感じます。

もっとも、これは軍服だけではなく、制服一般にいえることなのかもしれません。街で制服姿のポリスを見かけると、特に悪いことをしていなくても何というか…威圧感がありますよね。同じ人物がシャツにデニムなら全く感じることのないパワーを感じてしまいます。

つまり今回の展示は、モードの持つパワーについて考えてみることをテーマにしているんです。そうそう、80年代にはパワースーツという言葉もありました。ハイブランドのスーツで固めた弁護士さんと、安っぽく古いデザインのスーツの弁護士さんとでは、どうもハイブランドの方の弁論している内容に信憑性があるように感じてしまいます。アメリカは陪審員制度なので、内容の信憑性はとても大事で、だから余計にヨレヨレなコートを着ている“刑事コロンボ”のようなドラマが意外性で人気だったのでしょう。

向かって左側のこのキャツプ、覚えていますか?前回のアメリカ大統領選挙の折に、トランプ氏が被っていました。“アメリカをもう一度偉大にしよう!”というこのスローガンは、大統領選を勝つうえで大きな役割を果たしたと思います。と同時に、パワーある言葉をスローガンにして、それを一目でみんなの目に触れるキャップに印刷したことは大変上手い戦略だったとも思います。

トランプ候補を見るたびに、この言葉が目に入ってきますから、よほど強い反感を持っていない限り、何度も見ているうちに“この人がアメリカをもう一度偉大にしてくれるかもしれない”という気持ちになってきそうですから。



ところが、トランプ大統領が誕生したことに強く反発して、誕生と同時にワシントンのホワイトハウス前に押しかけたたくさんの女性が被っていたのが、このプシーハット。先述のエマも言っていましたが、このプシーハット運動には、ソーシャル・ネットワークの広がりとそのパワーを感じましたね。

選挙戦の間ヒラリー・クリントンが女性初の大統領になることを支持していた女性たち。選挙期間中にはトランプ候補のセクハラ嫌疑も持ち上がりましたから、ここで女性のパワーを示そうと思った時、トランプ氏の“偉大なアメリカ”キャップに対抗して、プシー・キャットというセクシーな猫をイメージしたピンクの帽子が、女性たちのユニフォームとなったわけです。男性ながらマーチに参加して被っている人もいるようです。勇気がありますね…。

2018年からルイ・ヴィトンのメンズファッションのアーティステイック・ディレクターに就任しているヴァージル・アブロー自身のブランド“オフ・ホワイト。”

白人と黒人間の人種対立が強くなっていると感じた彼が、白でも黒でもないグレーな視点を提唱したことで、このブランドは世界の若者の憧れとなりました。ファッション・スティトメントがパワーを持っていることの、これも表れと言えるでしょう。



素材で見た場合、レザーには強いパワーを感じますね。女性がレザーを身に着けると、とってもセクシーなパワーが伝わってきます。女性がメークアップやドレスアップをするとき、男性に対してアピールする目的もありますが、一方で他の女性に対して自身のビューティ―・パワーを誇示する目的も大きいようです。



さて、ではパワーとはどう定義されるんでしょう。政治的なもの、経済的なもの、軍隊のような力自身の誇示、セクシーなもの、デモなど反抗することにもパワーが感じられます。

服だけではなくアクセサリーの持つパワー、特にシャネルなどのハイブランドには強いパワーを感じますね。バレンシアガというブランド名にも若者は敏感に反応します。これらはファーストクラスのパワーと似ていますから、経済力パワーでしょうか。



昨年流行りましたが、ところどころ裂けたデニムには、反抗のパワーを感じました。アメリカが歴史的に若い国だからでしょうか。星条旗にも、若々しいパワーは感じます。

監修したエマによると、彼女がこのプロジェクトに着手したのが2017年、2年間も準備に費やされています。今回の展示でもう一つ彼女が指摘しているのは、例えば80年代の女性が好んだ肩パットのスーツ等に現れているように、これまでの人類の歴史の中では、主に男性のパワーや権威にあやかる形で、それまでスカートだった女性がパンツをはくようになったり、男性が作業用に好んだ丈夫なデニムを女性がはきはじめたりと、女性が男性の服を模す形でのユニセックス化が進んできました。

ところが近年は逆に、男性がフェミニンなフリル調のシャツを着始めたり、メークアップしたり、これまでの歴史とは逆方向のジェンダーレス化が見られるということです。面白いですね。

人影もまばらな街並みを通り過ぎるとき、これまでの歴史とは全く違う何かが起きていることを強く感じます。食料品店や日用品店以外閉まっているマンハッタンの街は初めてで、これがコロナのパワー、目には見えないけれど人類にとって危険なウイルスのパワーなんでしょうか。コロナ危機が通りすぎた後、私たちの生活、価値観は大きく変わっていると思います。何が本質的に大切で、何がそうでないのか…。

さて、パワーという視点からファッションを考えたパワーモード展、如何でしたか。ではまた、ニューヨークでお会いしましょうね。

ニューヨーク・ニューヨークVOL.83『モードが持つパワー』Takashi -タカシ-

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