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『ケイトスペード、ソーホー』ニューヨーク・ニューヨークVOL.129

マディソンです。

ソーホーにあるケイトスペードのフラグ店に来ています。この辺りにはジェイクルー、オールセインツ、セオリーやアリツィアなどたくさんのブランドショップが路面店として立ち並んでいるんです。その一方で、建物の上階はアパートメントになっている形がほとんどです。つまり、一階にはブティックが多く飲食店がないので、食べ物の匂いが上に上がってこないから住めるということなんでしょうね。

それから飲食店が無い分、人通りも混雑しないので、通りはとてもすっきりとしています。



ショップ内には、クリスマスから年末にかけてツリーも飾られていたそうですが、年も明けて一段落した様子ですね。ただファッションウィーク中にはバレンタインデーも挟まれているので、そのころまではこのまま、プレゼントのデコレーションでいくとスタッフの人から聞きました。

デコレーションは銀に赤が映えています。そうそう今年から来年にかけて、赤は多々のブランドがコレクションに起用していました。どうやら流行りのようですが、ケイトスペード、しっかり流行も抑えたディスプレィですね。



ケイトスペードはニューヨークガールズのバッグという触れ込みで、アメリカ国外ではロンドンやパリからスタートした後に、世界中で大ヒットしました。何となく若い層向けブランドと思われがちなんですが、実は幅広い層に人気です。ソーホー店に飾られていたバッグも、20代はもちろん、60代でももちろん大丈夫なデザインと作りでした。

1993年にケイトが夫のアンディ・スペードと立ち上げたケイトスペードは、2017年にはタペストリー社の傘下に入っています。タペストリーは元々はコーチだったんですが、名前を変え、コーチ、ケイトスペード・ニューヨークやステュワート・ワイツマンといったブランドを抱えた複数ブランド運営へと転向しました。自分の名前のブランドを売却してしまったケイトは、その後フランセス・バレンタインという新しいブランドをアンディと立ち上げています。

ケイトスペードというと、カラフルな色合いのバッグが多い印象がありますが、このパステルブルーという色は彼女のお気に入りのようですね。私の持っているケイトスペードもデザインは違いますが、全く同じ色です。実はケイトスペードのバッグの特徴がもう一つあって、それは凝った留め金。例えば黒と白のバッグの留め金はスペードのマークです。

ケイトスペードの正式ブランド名はケイトスペード・ニューヨーク。正式なブランド名にニューヨークがつくほど、この街の代表ブランドと言えます。ニューヨークの街のニックネームは、ビッグアップルですが、このアップルデザインのバッグとインナーバッグ、色違いで可愛いですね。

ケイトのニューヨーク愛の強さはファッション誌のインタビュー記事でもたびたび目にしましたが、サラジェシカ・パーカー主演“セクス・イン・ザ・シティ”の世界観と、ケイトスペードの世界観はとてもよく似ている気がします。そんなケイト、実は生粋のニューヨーカーではなく、ミズーリ州カンザス市の出身なんです。カンザスといえば、あの有名な“オズの魔法使い”を想い出しますよね。

アリゾナ州立大学で後に夫でありパートナーとなったアンディと出会い、1986年に若い二人はニューヨークにやってきたんですが、カンザスからニューヨークへの冒険の旅を思い浮かべると、オズの主人公ドロシーとケイトが少し重なる気もします。

こんな風に、外にもビッグアップルの飾りが。アイラブ・ニューヨークのトートが真ん中に。ニューヨーク愛の強いケイトスペードが去年秋発表したのが、カプセルコレクションのI love NYシリーズで、このトートバッグはその中の一つです。

このコレクションは、コロナがとうとう去って、ニューヨーカーの女性たちが仕事をしたり、遊びに出かけたりといった元の日常生活に戻っていける喜びを表したそうです。ニューヨークらしい遊び心を感じるのが、同時に発表されたアイコン・シリーズで、アップル形のリング、ホットドッグやイエローキャブの飾りなど、如何にもニューヨークらしいアクセントたちが勢ぞろい。

今では世界中で知られていて、ニューヨークを代表するフレーズにもなっているI Love NYというロゴですが、実はこれ、1977年にアメリカを代表するグラフィックデザイナーのミルトン・グレイザーが、イエローキャブの後部座席でデザインしたという逸話があるんですよ。



真ん中にエンパイヤスティト・ビル、非常階段が外側についている建物、犬を散歩する女性、などなどニューヨークらしい摩天楼のイラストがついたバッグとお財布です。立ち並ぶビル群がケイトスペードにかかると、カラフルで明るいエネルギーに溢れるデザインに。背景はパステルで、少しブルーがかったグリーン。本当に持っているだけで楽しくなるバッグですね。

大学卒業後マンハッタンに移り住んだケイトは、マドモアゼル誌の編集者として5年間働きました。アクセサリー担当でしたが、バッグが好きで、とはいえ彼女が持ちたいようなバッグが無いと感じたそうです。きっと彼女が欲しかったのは、明るく、カラフルなバッグで、時折留め金に主張があるものだったんでしょうね。

編集者を辞めた彼女は、彼女自身が持ちたいバッグをとことん見極めるため、フリーマーケットや、中古販売ブテイックをはしごしてインスピレーションを受けようと探したそうです。一方で有能な雑誌編集者だった経験を活かして、デザインや素材、そしてバッグを自身で製作するときのコストなども市場調査したとインタビューに答えていました。

そうして1996年、彼女が最初にオープンしたのがソーホーにあるこのフラグシップ店でした。当時実は夫妻はこの建物の上階に住んでいたそうです。

彼女がデザインした、遊び心溢れるナイロンのバッグは、ニューヨークの女性たちの心を鷲掴みにしました。1997年から2000年の間にニューヨークを訪れた人たちで、そのバッグを目にしない人はいなかったくらい、それほどブランドは一気に大成功したと伝えられています。2006年頃にはすでに100ミリオンダラー(115億円、1ドル115円)規模に成長していたというのですからブランドの勢いには物凄いものがありました。

ケイトのナイロン・バッグは、プラダやグッチなど名だたるハイブランドを引き離して、ヴォーグ誌編集長で伝説の女性アナ・ウィンターや、ハリウッドスターのジュリア・ロバーツ、グィネス・パルトロ―までも虜にしました。ファッションとはあまり関係の無い経済紙、ウォール・ストリート紙にもとりあげられて、その中で“マンハッタンの街で二人の女性が出会うとき、それぞれがケイトスペードのバッグを持っていることで、お互いが同じ感性の持ち主だと認め合ってうなづきあう、とてもシックな瞬間が訪れるのだ”と書かれたそうです。

ケイトスペードのすぐ近くに、変わったディスプレィのショップがありました。スローモー・インスティテュートといって、ドロドロでネバネバな素材で遊ぶ場所のようです。子供だけでなく、大人も参加できるそうなので、時間のある折に、一度入ってみたいですね。

このカラフルさ、奇天烈さ、きっとケイトなら好奇心満々で入ったでしょうから。

ミーティングの予定があったので、ミッドタウンに戻ってきました。6番街のこの高層ビルの中の法律事務所に、何と小室圭さんが働いているそうです。お二人のお住まいはここから西に4ブロックくらい、歩いて通える距離なんですね。

ミッドタウンに住めば勤務地に近いという便利な点は確かにあるんですが、私自身はソーホーのブテイックの上のアパートの方が生活感があって楽しそうだと思います。余計なお世話かもしれませんが…。

まだまだ冬で寒い日が続きそうです。3月は風が強く、高層ビル街の風は時々突風だったりもしますし。

マンハッタンはようやく屋内でもマスク着用義務がなくなりました。それでも一斉にとはいかないようで、外ではマスクをしている人たちを見かけなくなりましたが、屋内はまだほとんどみんなマスクをしています。ただそれが用心でなのか、今のところまだ習慣が抜けていないだけなのか、どちらかはわかりませんが。

いよいよ日本も帰国後の隔離がなくなったようで、となると日本からマンハッタンを訪れる人たちも増えてくることでしょう。

さて、如何でしたか。

ではまた、ニューヨークでお会いしましょうね。

『ケイトスペード、ソーホー』ニューヨーク・ニューヨークVOL.129Takashi -タカシ-

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