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『秋のニューヨーク、フリック・マディソンでバークリー・L・ヘンドリックス展が開催』ニューヨーク・ニューヨークVOL.168

マディソンです。

アッパーイーストにあるフリック美術館で、バークリー・L・ヘンドリックス展が始まり、街のファッショニスタたちの話題になっています。

ニューヨークの美術館はメトロポリタンやブルックリン、MADなどでも撮影OKなんですが、個人のコレクションから始まったからでしょうか、ここでは作品の価値を守るために撮影禁止になっています。ですので、作品の写真はフリックからリリースしてもらいました。

ただ今本体のフリック美術館が改装中で、コレクションはこの、臨時の建物のフリック・マディソンで展示されています。ここは75丁目のマディソン街なんですが、改装している場所は少し南の70丁目、5番街とマディソン街の間にあります。

その改装中のフリック美術館というのは元々、19世紀から20世紀にかけてコカ・コーラと鋼鉄事業で財を成したヘンリー・クレイ・フリック氏の邸宅でした。当時著名な建築家トーマス・ヘイスティングスが設計した豪邸で、フリック氏の集めたコレクションは1935年から一般公開されています。

コレクションはルノアールやレンブラント、フェルメールなど名作がたくさん集められていますが、改装中で豪邸内が見られないのが少し残念でした。

今回フリック・マディソンがバークリー・L・ヘンドリックスを展示するにあたって、メディアが大々的に広めたのがこの、ラウディ・ママという作品でした。金をモチーフにしたイタリアのルネッサンス的手法で、発表当時も、大いに街の話題になったそうです。

ヘンドリックスは60年代後半から、アフリカ系アメリカ人の肖像画を、ヨーロッパの絵画の手法で次々発表していったことで知られています。今回の展示を監修した学芸員ナグとサージェントによると、ヘンドリックスは現代のコンテンポラリー・アーティストに多大な影響を与えたアーティストだそうです。その作品だけではなく、彼の手法や、作品に対してのアプローチが革新的だったという点で。

そんなヘンドリックス、フリック美術館がニューヨークの街で一番のお気に入りだったとか。

ヘンドリックスは1945年にフィラデルフィアに生まれ、ペンシルバニア大学でアートを専攻した後、名門イェール大学の大学院でアートのマスター学位も取得しています。

彼はジャズ音楽やバスケットボールなどの、アフリカ系アメリカ人の文化をアートの中に織り込んでいこうと工夫を重ねました。1966年ペンシルベニア大学時代に奨学金を得て、ヨーロッパに留学、ここで彼の作風に大きな変化が訪れます。

ヨーロッパ滞在中、憑かれたように美術館巡りをした彼は、アフリカ系アメリカ人の肖像画展示の少なさに唖然とします。帰国してフィラデルフィアに戻ると、そこからは精力的にそのテーマに向かい、次から次へと作るべき作品のインスピレーションがわいてきたそうです。

今回、フリック・マディソンでヘンドリックス展が開催され、そのオープニングパーティに招かれた人たちが、真っ先にお互い尋ねあったのが、“何を着ていく?”だったというところに、ニューヨークの街での彼の評価が現れていると思うんですが、ファッショニスタが今、強く惹かれているアーティス、それがヘンドリックスなんです。

60年代後半に創作されたアートなのに、例えば上の作品など、今年発表されたものと言っても、何の違和感もありません。ヘンドリックスはつまり、時代の先にいた、アートの先駆者だったと言われています。

ヘンドリックスにとって、“登場人物がどのようなファッションをしているのか”はとても大切な要素だったそうです。

今のようにスマホの時代ではなかったので、大きなカメラを首から下げた彼は、カバンにポラロイドを忍ばせて街に出て、そのファッションにインスピレーションを受けた人物にアプローチ、彼らを撮影させてもらったそうです。時にはその場で撮影したポラロイド版をあげることで、撮影に協力してもらうことも。

その後アトリエに戻り、現像した写真をもとに、ヨーロッパの絵画技法を取り入れてアフリカ系アメリカ人の肖像画を制作する彼。

当時はまさにアフリカ系アメリカ人としての素質を生かす“ブラック・イズ・ビューティフル”というメッセージが誇らしく掲げられてきたころで、プラカードでデモンストレーションしなくても、彼のアート自体が、そうしたメッセージを自然に、巷に広げていきました。

上の写真はこれ、両方の靴のリボンがクリスマスカラーで、これはパーティに現れた人物なんでしょうか。

下のウディの躍動感も凄いですね。

一階には、改装後の本体のフリック美術館の模型が飾られていました。5番街にこの広さ、敷地面積だけでも恐ろしい広さです。

それほどの財を成した人物が集めたコレクション、そこには、何かアーティストの感覚と通ずる意識がフリック氏の中に芽生えていたんでしょうか。

面白いのは、日本では123億円のバスキアを購入して話題になったゾゾ元社長の前澤氏はじめ、ディカプリオ、このフリック氏など、成功者がアートコレクターズになるケースがとても多いということです。

アートはですから、アメリカでも高額不動産購入や、宝石、金などと並んで富裕層のコレクションの対象となっていますが、ただ絵画は、特にヘンドリックスの絵画のように大きいものは、何かの際にもって逃げるというわけにもいきませんし、重くて運びにくい金塊と同じで、その保存方法も大変です。となると投資だけではなく、そこに成功者の意識と通じる何かがきっと、あるということなんでしょうね。

街はハロウィンの季節。美術館近くの5番街の高級タウンハウス前には、郊外の農場から運んできたとみられる、巨大パンプキンが並べられていました。

コロナの頃に一時的な屋外スペースとして設けられたレストランの仮設ブース、マンハッタンは交通渋滞がひどいので、通りによっては撤去勧告の出るところもあるんですが、アップタウンは続けていてもいいようです。

さて、如何でしたか。

芸術の秋、そしてファッションの秋真っただ中のニューヨーク。そんなニューヨークでまた、お会いしましょうね。

『秋のニューヨーク、フリック・マディソンでバークリー・L・ヘンドリックス展が開催』ニューヨーク・ニューヨークVOL.168staff

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