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ニューヨーク・ニューヨークVOL.68『オキナワ生まれの鬼才、ジョッシュ・スミス』

マディソンです。 
いつもは観光客でにぎわうマンハッタンの夏ですが、2度の停電騒ぎで訪れる観光客が少なくなっている感じもします。

今回はアメリカン・アートの展示で知られる、デービッド・ツイーナー画廊を訪ねました。
いつもは地元の人たちでにぎわっているんですが、夏で地元民は避暑地へと抜けだしているのか、ここもひっそりとしていました。

雨なので、余計ひっそり度が増していますね。
写真の高架道は道路ではなく、使われなくなった鉄道のスペースを再利用したハイラインと呼ばれる空中公園です。
近年開発の進むマンハッタン西側のハドソン川沿い、34丁目のハドソンヤード付近から、ミートパッキング地区まで2.3キロメートルにわたって細長く伸びている公園なんです。

デービッド・ツイーナー画廊はこのハイラインをチェルシー地区で降りた場所の、画廊が立ち並ぶ通りにあります。

外の表示はデイビッド・ツウィーナー。
この画廊はアメリカン・現代アートを紹介する目的で、1993年まずはソーホーにオープンしました。その後2002年には場所をチェルシー地区に移しています。2017年にはイギリスのロンドン、そしてマンハッタン内ではアパーイースト地区、そのうえ太平洋を越えて香港にもオープンしているんです。昨年オーナーであるディビッドが、2020年の秋までにマンハッタンに5件、海外には7件に増やすと記者会見を開いて話題になりましたが、まさにグローバル化の申し子のように、ユニークに展開する画廊なんです。

ニューヨーク・タイムズが昨年の記者会見の後報じたところによれば、この画廊は年間500ミリオンダラー(約540億円)もの売り上げをあげているそうです。ということは世界的にアメリカの現代アート人気が高まってきているということなんでしょうね。

今回紹介されていたのは日本のオキナワ生まれのアーティスト、ジョッシュ・スミスの作品でした。
写真はカラフルなんですが、なんとも不思議なアートです。

近くによってみるとこんな感じ。
タイトルはタートルとあるので、亀のことですね。ただそれぞれ甲羅デザインが違っていて、この真ん中のは中にライオンがいます。

スミスの父親はアメリカ軍人で、沖縄に駐留したことがあり、その折に彼が生まれたようです。基地から基地を転々とする父親について、最終的には家族はアメリカに戻りテネシー州に落ち着いたと聞いています。彼はそこで成長し、現代アートの作り手となりました。日本とも縁があるからなのか、六本木の画廊“ヒロミヨシイ”でも2015年には個展が開かれたそうです。

色調は明るいものの、先の亀もそうでしたが、何となく不気味な絵という印象…。

こちらのタイトルはヒューマン・アニマル。動物人間という意味でしょうか。動物というより、蜘蛛のような感じですが…。

小さな刈り手というタイトルなんですが、鎌を持っているからか、それとも彼の作品の傾向からか、まるで映画に出てくる死神をイラストしているかのようです。
題名と印象の不気味さに対して、やけに色調が明るいんですね。しかも滑らかな動きがかんじられるあたり、別次元の時間の中に彼の意識があるかのようです。ムンクの“叫び”と通じるものがあるような気がしました。

こちらは新作で、タイトルは悪魔。手前のコーンはよく工事現場などで交通封鎖する場合に使われるコーンと見た目は全く同じに見えますが、絵画だけではなく、表現の手段として彫刻もしてみたいということで、スミスの作だそうです。

彼曰く、“自分の絵は大好きな人か大嫌いな人に分かれると思う。でも、何も感じないプラスチックのような作品ではない”と言っています。見る人に強い好悪の感情をわかせることが、彼のアーティストとしての力量という風に聞こえますね。

このヤシの木の絵はとても素敵だと思いました。熱帯の風が吹いてくるような、ゆらゆらと揺れている様が伝わってきます。湿気を帯びてどんよりと生暖かい風、そんな風に揺れているヤシの向こうに、熱帯の海が横たわり、今まさに日が沈もうとしている。力強さの中に、ゆっくりと消えていく死の気配が感じられます。

悪魔や死神よりも、もっと生暖かく、緩慢な死が表現されていますね。この絵だったら、自分の家に飾りたいと思いますが、虫のような亀や悪魔はちょっと…でも飾る人がきっといるんでしょう。

スミスは自分の名前もアートにしてしまうようです。

今回の展示では自身の名前をアートにした作品はこれだけでした。ただ、彼がアーティストとして注目を集めたのはそもそも、この自身の名前のアートを2004年、チャイナタウンにあるレナ・スポルディングで開催された個展で発表したことがきっかけだそうです。

彼自身の言葉によれば、アイデンティティーの一つである自分の名前自体をアートにすることで、美術史の中で権威を形作る手法の一つになってしまった自画像、やはりアイデンティティーの一つである自画像の自明性に疑問をなげかけたかったそうです。とはいえ、絵自体の印象は彼の色使いのせいなのか、革新的というよりは、ただただポップですね。



強烈なアートなので、なんだか息が詰まりました。外に出て、雨に濡れた緑の、命の気配にホッとしています。

外に出ると少し落ち着く柔らかい雨の中にひっそりと、最近大人気のハイラインホテルの入り口が見えました。17世紀半ばからカトリック神学校だった歴史的建造物を改装したホテルで、今でも食堂では神学生たちがランチをしているそうです。

客室はアールヌーボーな壁紙やヴィンテージ物で、クラッシックにしつらえてあるそうで、地元ニューヨーカーたちが一度は泊まってみたいホテルのベスト3に上げられているくらい人気なんです。

さて、如何でしたか。
ではまた、ニューヨークでお会いしましょうね。

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